休日会話 泉孝介ver.


学校も部活が無い貴重な休みだが、 やりたいことがあるかといえば特にこれといってあるわけではない。
朝のロードワークもいつも通り行うと、体を休めるという意味では正直動きたくない。 ただ寝ていたいという思考でごろんとベッドに横になり、 ゲームをしているとノックの音と共に入ってきたのは向かいに住む幼馴染の姿。

「孝ちゃん」

と名前を呼び入ってきたかと思えば、「ちょっとだけ構って」と言って家から持参してきたらしい 手に持っていたスナック菓子とペットボトルのジュースを泉に見せる。 どうやら自分と同じようにも暇だったのだろう。そんな様子を悟ったようにゲームを切り、ゆっくりとベッドから起き上がる。

「入れよ」
「やったー!」

嬉しそうに部屋に入ってくるが勢いよくベッドに腰掛けている泉に抱きついてくる。

「おいこら。部屋に入れっていっただけで抱きついていいなんて言ってねぇよ。つか、まずそれ置け」
「あ、そうだった」

泉の言葉で思い出したように泉から離れ、手にしていたお菓子とジュースをテーブルの上に置く。 くるりと笑顔で振り返ったが泉の近くにやってきてちょこんと床に座る。

「なんか見るか?」
「うん!」

泉が立ち上がり、部屋の棚に置かれているDVDを厳選していると 「あ。私、これ見てない」といつの間にか泉の背後に立ち、有名な映画のタイトルが書かれたDVDを指してそう言う。

「ああ。それ俺も見てねぇや。この前、兄貴が部屋に持ってきたんだよ。あんま興味ねぇから忘れてたな」
「でも今、人気だよね。私これ見たい」
「ん。じゃあこれにするか」

泉は部屋のテレビのデッキにDVDを入れ、再生ボタンを押した後で、 ベッドを背に床に座っているに「こっち来いよ」と泉が声を掛ける。 嬉しそうに「うん」と頷き、もベッドに座る泉の隣に腰掛けた。

聞こえてくるテレビからの音声 画面に現れる映画のロゴ

「はい」
「ん」

泉もが持ってきたお菓子の袋の中に手を伸ばし、二人で黙って画面を見つめる。 この距離がどうももどかしいのは、自分達の関係が幼馴染という枠からいまいち抜け出せないせいだろうか。 二人同時にお菓子へ伸ばした手がこつんと当たり、至近距離で互いに目が合う。

「……」
「……」

この胸の内の緊張感を互いに何か感じているのだろう。 少しの間、見つめ合い沈黙が流れるも、泉がの手に指を絡めて握りしめる。 それが合図のように、恥ずかしげな表情をするもこつんと泉の肩に頭を乗せる。 なにも言わない泉にクスクスと笑う。

「孝ちゃん、重くない?」
「別に」
「じゃあ甘えちゃおうっと」

このまま唇を奪ってやると、どうなるのだろう?
押し倒すと、どういう反応をする?
なんていう邪神が泉のなかで掻き立てられる。
しかしやりすぎると避けられそうだから、実際はこれ以上なにもできないわけなのだが…。

「にゃあ」
「…なんだよ。突然」
「よく鳴く隣の家の猫の真似。撫でて貰おうと思って」
「阿呆らしいことしてんじゃねぇよ」

反対の手でガシガシとの頭を鷲掴んで撫でると ぎゅっと目を瞑り、「にゃああ」と冗談めかしたように言いながら少し嬉しそうに泉の腕に抱きつく。 そして上機嫌でテレビを見るに泉は息を吐く。

「(ったく、俺からやると逃げるくせに…)」

ちらりとに視線を移し、まぁ、楽しそうならいいか。 と泉は心の中で思い、再びテレビの方へと顔を向けた。