06話 ランボ君来る!
ドオン!!
「んぎゃああああああ」
「…花火じゃ、ないよね?」
隣の家の私の部屋にまで、ツナの家からであろう激しい爆発音と悲鳴が聞こえてきた。 流石に心配になり、愛しの幼馴染の家へとやってきたわけだが…。
「こんにちはー」
私がツナの家へと入るとツナと奈々さんのほかに、見覚えのない牛柄の服に角が生えている男の子が食卓に座っていた。
「!」
「ツナ?」
「あら、ちゃん。いらっしゃい!」
「ぴぇええええ!」
「え!」
大きな声で泣き出した牛柄の服の男の子に、私は思わず駆け寄った。
「なるほどね」
「なんで俺が、こいつの面倒みさせられるんだって話だよ」
「まぁまぁ、えっと、ランボ君だっけ?可愛いじゃん」
「何処がだよ!」
ツナに聞いたところによると、この牛柄の服を着たこの子は、ランボ君というらしい。 どうやら、ボンゴレとは別のマフィアの子で、リボーン君を殺しに来たらしいんだけど、あのリボーン君に勝てるわけはなく、結局返り討ちに合い、こうして泣きまくってるようだ。
「ぐす、ぐす…」
リボーン君のことだから、容赦なかったんだろうな…と泣きまくるランボ君に私は、仕方ないといったように笑顔を向ける。
「ランボ君、私はって言うの!宜しくね!」
「ひっく…う??」
「うん!」
この調子でなんとかランボ君を泣きやまそうと、ツナと私は川原に来てランボ君と話をすることにした。
「ほら、アメ玉が好物なんだろ?」
ランボ君はコクンとうなずき、アメ玉を舐め始めた。
「ツナ、私も欲しいー!」
「もうないよ!」
「じゃあ、私への愛でいいよ」
「意味わかんねぇよ!」
私達がランボ君を挟んでくだらない話をしている間にランボ君は泣きやみ、安心したツナが帰ろうとした時、ランボ君がツナの足を掴む。
「はなせって!」
「ぐぬぬー!」
ランボ君は力強くツナの足に抱き着き、離れようとしなかった。
「いいじゃん、ツナ!連れて帰ろうよ」
「ええっ!…はぁ~、ったく、まぁ、置いていくわけにもいかないか…」
私は、ツナの足元に抱きついているランボ君を腕の中に抱きかかえる。
「、俺っちの子分にしてやるもんね!」
「えー、ツナに許可取らないとだめかなー」
「俺を巻き込むな!」
私とツナは、ランボ君を連れてツナの家へと戻った。
「あら、お帰りなさい!ちゃんもご飯いっしょにどう?」
「いいんですか?」
「いいわよ、そう思ったから余分に作ったんだもの」
「ありがとうございます!」
奈々さんにそう言われた私は、ツナの家で奈々さんの美味しい料理をご馳走になってたんだけど…。
「回覧版持って行くから、仲良くしてるのよ」
家を出ていく奈々さんを目にして、私もぼそりと呟く。
「…私も帰ろうかな」
「帰るなよ!」
「私に帰って欲しくない?」
「お前、ここぞとばかりに言ってるな!」
「うん!」
「はぁー…」
と言うのも、ランボ君とリボーン君も一緒に座って食べてるのはいいが、私とツナ以外の会話は聞こえてくることが無く、シーンとしていて明らかに気まずい雰囲気が流れているのだ。
「…ツナ」
「お、おいリボーン!なんとかしろよ!」
耐えきれなくなった私がツナに視線を送ると、ツナも一緒の気持ちだったようで、リボーンにランボ君をどうにかするように話を振る。
「…」
「ラ、ランボ君?」
なにも言わないリボーン君に対して、ちらりとランボ君の方を見ると、ランボ君は悔しそうな表情を見せると、ナイフを構え強く手で握りしめている。
「っしゃあ!」
「ぇえええ!」
ランボ君がリボーン君にナイフを投げつけるも、キン!と何事も無いようにリボーン君がランボ君のナイフを弾き飛ばす。 さらにリボーン君が弾き返したナイフはランボ君の方へと向かっていき、見事、ランボ君の頭へと突き刺さった。
「うわああああああん!」
「お、おい!」
「ランボ君、大丈夫?!」
私が泣きまくるランボ君に手を差し出そうとした時、ランボ君は頭の中からなにやら大きなバズーカを取り出した。
「え?」
「そ、そのバズーカって、たしか!」
「え?なに?!」
「じ、自分に~!!」
「きゃっ!」
ランボ君がピンク色のバズーカを自分に撃つと、ドオン!と大きな音と共に白い煙が家中に広がっている。 なにが起こるのかと、不安を抱きながらもランボ君の方を見ると、晴れてきた煙の中からでてきたのは、明らかに違う人物だった。
「ど、どなた…ですか?」
5歳のランボ君の姿はそこにはなく、私達の目の前に立っていたのは、短い髪にパーマが掛り、黒いジャケットを羽織ったスレンダーな大人の男性だった。
「お久しぶり、若きボンゴレとさん」
「ええ?!」
「…?」
こんな人、知り合いにいたかな?
と私が首をかしげていると、その人は、ふう、と息を吐いて私達に言う。
「自分、泣き虫だったランボです」
「な、なんだって!!」
「うそー!」
驚く私達に対して、ランボ君だと名乗ったその男性は、さっきのバズーカは"10年バズーカ"というもので、 そのバズーカで打たれた者は、10年後の自分と5分間入れ替わる事が出来ると私達に説明をする。
「この伊達っぽいにーさんが、あの牛ガキー!」
「ツ、ツナ…口悪いよー」
「さんは、いつの時代でもお綺麗ですね」
「え?あ、ありがとう…?」
「なに言ってんだ?こいつ」
「10年前の自分がいつもお世話になってます」
「あ、いや。それは、別にいいだけど、近いよ…ランボ君」
これが本当にあのランボ君なのだろうか…? 私の腰に手を回して、お世辞を述べる大人なランボ君に、どういう反応をすればいいのか悩んでしまう。
「よぉリボーン。みちがえちゃっただろ?」
大人の風貌をするランボ君にも、リボーン君はなにも動じず、未だに口を開こうとはしない。
「やれやれ。こうなりゃ実力行使しかねーな」
「あ…」
大人になったランボ君が私から離れて、身構えるように立つ。
「サンダーセット!」
そう叫ぶとランボ君の角が雷に打たれたように光り、そのままランボ君がリボーン君に向かって走り出す。 しかし、相変わらずリボーン君はなにも言わずに、フォーク一本でその攻撃をぴたりと止める。
「い、痛そう…」
見事にランボ君の頭にはリボーン君が刺したフォークが刺さっていた。
「が・ま・ん…うわあああああん!!」
どうやら、10年経っても泣き虫なのは変わらないようだ。 泣きながら家を出ていってしまったランボ君と入れ替わるように、怒った表情を見せる奈々さんが家に帰ってきた。
「こら、ツナ!」
「か、母さん?!」
「仲裁に入ってって言ったでしょ?」
「うわあああん」
「(元に戻ってるー!)」
どうやら家を出て行った直後に、5分経ったようですっかり小さなランボ君に戻っていた。
「ランボ君、リボーン君と友達になりたいんですって」
「ええ!」
私もツナも奈々さんの言葉と、泣いているランボ君を信じ掛けて気を抜きそうになったその時、 ランボ君の表情が一変して、再び頭の中からなにかを取りだした。
「なんてうそだよーん!死にやがれー!!」
「手榴弾?!」
私達が慌てた表情をするなか、リボーン君だけが冷静だった。
キキキン!
リボーン君は、ランボ君によって投げられた手榴弾を食卓に並ぶお皿で弾き返す。
「ぐぴゃああああああ!」
ドドドドド!!
「ママン、おかわり」
リボーン君は手榴弾をはじき返したお皿を表向けて、何事も無かったかのように奈々さんにそう言う。 リボーン君が手榴弾を弾き返した先は、またしてもランボ君で…綺麗にクリーンヒットしていた。
「だ、大丈夫かな?」
「ったく、もう…」
ツナは呆れたように、深くため息を吐いた。
「でも、ランボ君があんな風に成長するなんて、びっくりだね。ツナ」
「あー…そう、だね」
玄関先で家に帰ろうとする私を見送ってくれるツナに何気なくランボ君の話を振ってみたが、 どこか、反応が薄いツナに首をかしげる。
「ツナ?どうかした?」
「え。別に。胡散臭い感じだったなって思ってさ」
「あはは、そんなこと言うとランボ君が可哀相だよ。私もお世辞でも誉めてもらえて嬉しかったし?」
クスクスと私が笑いながら冗談でそう言うと、ツナはムっとした表情を見せる。
「だから、それが胡散臭いんだって!素直に喜ぶなよ!」
「えー。だって普段、綺麗なんて男の人に言われることないもの」
「別に、そんなの言われなくてもいいじゃん」
「お世辞でも、言われないより、言われる方がいいんじゃない?」
「あんな嘘くさいセリフの何処が良いんだよ」
少しいつもと様子が違うツナの顔を私は覗き込むように見る。
「…ツナ、もしかして」
「な、なんだよ…」
「ランボ君に妬いてるの?」
「なっ!」
「あ。いや、そうだと嬉しいなーって思って」
「や、妬くわけないだろ!」
「ええー!もう!いいよーだ!」
私は、いじけた様にべ―っとツナに舌を出して玄関を出た。
「はぁ~…(ごめん、。嘘吐いた…)」
ツナは力が抜けたようにその場にしゃがみ込み、頭を掻く。
「なにやってんだよ、俺…。」
自分の目の前で起きた大人のランボとのやり取りを思い出して、再び苛立ちを覚える。ツナは自分に反発するように、ぼそりと呟いた。