47話 修行開始


「え!ヒバリさん?!あの人、群れるの嫌いなのに入るわけないだろ!」
「だからこそ、"雲のリング"がふさわしいんだ。あとはディーノに任しとけ」
「だ、大丈夫なのか?!」
「お前は人の心配してる暇なんてねぇぞ」
「え」
「はっきり言ってヴァリアーは超死ぬ気モードのお前より上だ。はるかに鍛えねぇと殺されるぞ」
「ちょっ!待て!そもそも俺は納得してないってば!」
「守りたいんだろ?」
「!」

その言葉で隣にいたを思わずツナは目を合わせる。
「ツナ?」と首を傾げるをよそに、リボーンは拳銃を取り出した。

「見ろ。レオンが大量にこしらえてくれたぞ」
「ま…まさかそれ全部、死ぬ気弾…?」
「そうだぞ。それじゃ、修行の第一段階始めるからな」
「ちょ、ちょっと待て…」

ズガン!!

リボーンの死ぬ気弾がツナの額を貫いた。

「いってこい」
「死ぬ気で鍛える!!」
「え!ツナ?!」

死ぬ気モードになると、ツナは走って何処かへ向かって行ってしまった。

「ツナ、どこ行ったのかな?」
「本能的に修行でやることをわかってるみたいだな。、お前も来い」
「え?私も?」
「今はここに居るより、山の方が安全かもしれねぇぞ」
「…へ?」

はごくりと息を飲むも、「ついて来い」と言って歩き出すリボーンの後を追いかける。


「んな?!ここどこー?!」
「お前が死ぬ気でここまで来たんだぞ」
「え?!わ、わわっ!」

ザパン!!!

ツナは死ぬ気モードの効果が切れ、絶壁から川に真っ逆さまに落ちる。

「ツナ大丈夫!?」
「ケホッ!ケホッ!……お前…なんで…」
「リボーン君に連れてこられたの」
「あいつまた勝手に…」

川から陸地に上がり、喉に川の水を詰まらせるツナにがポンポンと背中をさする。

「あ、ありがと……」
「ううん」
「あと100メートルもありますぞ。これじゃ、とてもヴァリアーに歯が立ちませんぞ」
「なっ!う、うるさいよ!そもそも俺は戦う気ないってば!」

リボーンの声が聞こえてきて、ツナは反射的に言葉を返す。

「今頃ニセモノのリングがヴァリアーに届いたはずだ。お前が嫌でもヴァリアーとの全面対決はもう避けられねぇんだ」
「そ、そんな!あんなヤバイ奴のいるところと全面対決なんて考えられるか!」
「2日だからな」
「え?」
「2日以内にこの絶壁を登れるようにしろ。それだけの基礎体力は修行の最低条件だ」
「そんなことできるわけないだろ!」
「これは初代ボスがしたという由緒ある修行だぞ」
「初代?」

リボーン曰く、歴代ボンゴレのボスにも色々な戦闘スタイルの人がいて、武器もそれぞれ個性を生かしたものだったらしい。

「その中に一人だけお前と同じグローブを武器に戦った奴がいる。それが初代ボンゴレボスだ」

"大空"と謳われた初代ボンゴレボスは歴代最強と呼ばれているらしい。
そんな初代ボンゴレボスが行ったとされている修行を参考に、ツナの修行が組まれているリボーンは言う。

「まぁ、これは修行の入り口だな」
「そ、そんなこと言われても…。つか、すでに筋肉痛で体ボロボロなんだけど!」
「そのための死ぬ気弾だぞ」

ズガン!

リボーンの弾丸がツナの額を貫くと、いつもの如く死ぬ気モードになるとツナは…。

「死ぬ気で休む!!」

バタンと倒れ込むように眠ってしまった。

「これがミソだぞ。休み方によって修行の効率は何倍にもアップするんだ」
「な、なるほど…」
。お前には、その間に"月のリング"について話しておくことがある」
「え?病院で聞いた他にもなにかあるの?」
「ああ。お前には自覚して貰う必要があるからな」
「?」
「"かぐや"であり、"月の姫"であるという自覚だ」
「じ、自覚って言われても…」

自分はただの女の子だ…。急にお姫様とか、言われてもピンとくるはずがない。 は困惑したようにリボーンの言葉に耳を貸す。

「前にも言ったが、月のリングを持てるの資格があるのはお前しかいねぇんだ。それがどういうことか…」
「私自身がヴァリアーに狙われるってことだよね?」
「ああ。逃げられない血の運命だ」
「…申し訳ないんだけど、やっぱり私にそんな力があるなんて思えないんだよね」
「安心しろ。そのリングを持っていれば、嫌でも分かる日がくる」
「そう…かな?」
「リングは持ち主の覚悟に応えるんだ。つまり、今のに必要なのは、身体的能力ではなくお前の意思を固めることだぞ」
「そんなこと言われても・・・私はただツナの力になりたいだけだよ」
「それが本当に自身の意思ならな」
「え・・・?」

意味深な言葉を放つリボーンには思わず息を飲む。
しかし、リボーンはいつものようにニヒルに口角を釣り上げ、に言う。

「時間はまだあるぞ。自分の思考を巡らせてみろ。それもお前の修行なんだからな」
「リボーン君、意地悪だ…」
「お前は月のリングを継承した者なんだ。その意味を考えろ」
「うん。ツナも頑張ってるから、私も頑張ってみる」
「信じてるんだろ?ツナ達が勝つって」
「もちろん!ツナは勝つよ。ヴァリアーには負けない。でも…ツナを傷つけるようなら、誰だろうと私が許さない」

真っ直ぐな瞳でがそういうとリボーンはニッと口角を釣り上げる。

「変わらねぇな。お前は」
「変わらないよ。この気持ちは変わらない。だって私はツナの幼馴染みだから」
「…そうか。(だからこそお前には、月のリングが相応しいんだ…。でもとてもじゃねぇが、まだこいつらに俺から本当の事は言えねぇな)」

いつものように笑顔でツナに微笑むをリボーンは、じっと見つめた。
二人の根底にある"幼馴染み"というこの関係が、もし意図的なものだったとしても、このまま変わらずにいられるのだろうか…?


「あいててて…体中、傷だらけだよ」
「家で湿布貼ってあげるね」
「ありがと。そういえば父さんなんであんなとこ居たんだろ?」
「そういえばそうだね」
「ま、いっか。おかげで獄寺君も助かったし」
「そうだね」

帰り道で、ツナとは顔を見合わせて笑う。
なぜか獄寺が一人で修行をしていたところで穴を掘っていた家光と会ったことを思い出しつつも、 一度獄寺の家庭教師を断ったシャマルだったが、思い直してくれたようでよかったとツナは心の中で思う。

「……」

そんな二人の様子をリボーンは一歩離れて見ていた。

「(家光…)」

避けては通れない真実を知る時が、二人に近づいていた。