14話 溶けたアイス
仕事のあーとのご飯は、最っ高ー!いえい!
やっと今日一日の仕事を終えた私は拳を突き上げる。
「さぁ!晩御飯を食べに行こう!」
お腹が空いてたから、かなりご機嫌の様子で食堂へ向かった訳だけども…。
「ソースは甘口がお好き!っと…って、将?!」
食堂に入ってみると、私は将が素足でボールを操りながらトレイを持ち運んでいる光景が目に入った。
流石、将!偉い! 練習以外にも自分から…うん?将が、自分から思いついた?こんな危ないことを?
「怪しい…」
私が危ないことをしている将を見ながら少し怪しく感じていた。その時、聞き捨てならない発言がした。
「自分でやらせといて何笑ってんだよ」
と柾輝に言う翼の声。…はぁあ?
「今なんて言った?!」
「「っ!!」」
大声で叫ぶ私の声に周りが一気に驚き、こっちを向いた。
「あ、皆さんどうか気にせずにお食事を!」
そう言い、私は翼達のいる方へと足を向けた。
「うるさい!馬鹿!」
「私のことなんていいのよ!将にあんな危ない事をさせる様に仕向けたのは柾輝なの?!」
「仕向けたっつーか、まぁ、そうだけど」
「あんなに可愛い将が怪我したらどう責任とってくれるよ!あんた!」
「ちょっと落ち着けよ」
五助達に止められるが、これが…
「落ち着いていられますか!可愛い将の身になにかあったらどうしてくれるの?!」
ドン!と私は思いっきりテーブルを叩いた。
「お前!本当!うるさい!黙れ馬鹿!」
「黙らない!!」
反感する私が許せなかったのか、翼は少し低い声で…。
「黙れ」
「さー!私もご飯を食べよう!」
私が後ろを振り返った瞬間、ガシャン!と将がトレイをひっくり返す。
それが一馬にもろ直撃するところを見てしまった。
「いい加減にしろよ!!てめーっ」
「ごめんなさい!」
うん。これは将…いや、柾輝が悪い!
「柾輝君?後でゆっくりお姉さんとお話しようか?」
「へいへい」
将と一馬の言い合いに仲介へ入った食堂のおばさんに将が思いっきり殴られるのを目にした後、 急いでこぼれた食事を片付けている将の所へ駆け寄る。
「将!大丈夫?」
「さん…すみません迷惑かけて」
「ううん!気にしないで!変な事教えた柾輝が悪いんだから!」
「そんなこと。僕がヘタクソだから…」
将…。やっぱり、ちょっと焦っている感じがする。 うーん…今、将へ私がしてあげれそうな事は…うん!
「頑張れ!将!きっと将なら出来るよ!」
応援しかないよね!
「さん。ありがとうございます!」
それは凄く私の乙女ゴコロを爆発させられそうなほどの将の笑顔でした。
「きゅうーん!!もう!将かわいい!」
私が将に抱きつこうとしたその瞬間…ガシッ!と後ろの襟を掴まれ、体が後ろに放り投げられる。
「へごぉおお!!」
「お前、メシまだの癖になにやってんだよ。早く食べろ!そして消えろ!」
「いやいや!!さすがに消えるのは、無敵なちゃんでも無理だよ!」
「どうでもいいから早く食え!」
そうして無理矢理、将と離された私は翼に既に机の上に用意されていたご飯の元へと連れ去られた。 あれ?まさか翼が用意してくれたのかな?いやーない、ない!アッハッハー! でも、誰かが用意してくれたのには変わりないか。
「わー!誰だろう?なんだか私、お姫様みたいじゃない?」
「気持ち悪いこと言うな」
翼に呆れられながら言われました。
「何言ってんの。用意してくれた人に感謝の意味を込めて言ったのに」
気持ち悪いはないでしょう!
「お前も本当、素直じゃねぇのな」
柾輝は机の上に肘をつけ、呆れたように私に言う。
「はい?翼よりマシだと思うけど」
「どういう意味だよ!」
「そのまんまの意味ですけどー?」
「でも、確かにそれは言えてる」
「おっ!六ちゃん気が合うねー」
そう言いながら、私はご飯を食べ始めた。
「ごちそーさんまが食べたいな」
「おい、まさかそれ俺に言ってねーだろうな」
「わぁ!凄いね!柾輝!よく分かりました!」
パチパチと笑顔で拍手をしながら柾輝の方を見る。
「まだ喰い足りねぇってか?」
「冗談だよ。その代わり!」
「なんだよ」
「柾輝は私に、食事の後に甘いデザートを食べて欲しいって思わない?」
「はぁ?」
意味が分からないと言う様子の柾輝。
「遠回しにお前は、なんか奢れって言ってんだろ?」
「大当たりー!ハワイ旅行ーは、ないけどおめでとう!」
「お前、ある意味上手いよな…」
「へ?」
「いや…なんでもねーよ…」
変にねだるのが上手いと柾輝が思った今日この頃…。
「うーん!おーいしい!」
私は、柾輝にアイスを奢ってもらって機嫌よく皆で食べていた。
「本当、うまそうに食うよな」
「食ってる時もうるさいけど」
「はぁわ!新・食・感!」
ストロベリーの甘さがまた良いの!
完全に私の集中はアイスへと向かっていた為、翼達の視線など気付くはずがない。
「はぁー…」
と翼が呆れつつもを見て深いため息をついている一方、 は「うん!おいしい!」と、のんびり食べていた。 そんな時、達のの横を廊下で思いっきり元気よくサッカーをしている将と誠二が私達の横を通り過ぎる。
「将と…誠二?」
通り過ぎた二人を見ると、何故か翼達4人は意味深な笑みを浮かべた。
「!ちょっとそこで大人しくしてろよ!」
「え?翼?!」
「直ぐに戻ってくっから」
「ちょっと、柾輝!」
「!悪ぃけど俺のアイス見ててくれ」
「いや、だから…!」
「ちゃんといろよ!」
「あんた達までー!」
翼達四人はアイスと可愛い可愛い女の子を残して行きました…。
「…ま、いっか」
やっぱ男の子だなぁ。なんて思いながらアイスを食べて言われたとおり、大人しく座って待っている事にしたわけだが…。 しばらくアイスを食べているうちに、日々の疲れが私に究極な眠気が襲ってくる。
「ぁ、れ?」
やばい。眠くなってきた。そう思った直後、私は意識が途切れた。
「なぁ、あそこで寝てるのって…」
「ぁあ?」
「、だね」
結人と一馬と英士の三人が偶然寝ているを発見し、思わず駆け寄る。
「うわー、完全に寝てんじゃん」
そう言いながら結人がツンツンとの頬を指で突く。
「でも、なんでこんなにアイスがあるの?」
「そりゃが食うんだろ」
「こんなに?」
女の子一人に対して、アイスのカップが五つ。 はおかしな奴だが、いくらなんでも…と英士達は思うも、 いや、ならあり得るか。という思考が過ぎる。
「う、ん…」
三人の話声で少しが起きそうになっていた。
「やべ。起きそう」
「…運ぶ?」
「え?運ぶって何処に?」
「部屋に決まってるでしょ」
「え!英士!流石にそれはまずいだろ?!!」
「何勘違いしてるのさ。の部屋だよ」
「あ、…だよなー!」
あー焦った!英士ならやりかねない…と結人がほっと胸を撫で下ろした。 そんな結人を他所に、英士がを運ぼうの腕に触れたその瞬間…。
「ストップ!」
「!」
ちょうど戻ってきた翼がに触れようとしてた英士の手を掴んだ。
「勝手に人のものに触るなって教わんなかったわけ?」
「人の、ねー」
「なんだよ」
その場でバチバチと音が鳴るような火花が散っていた。
「僕はただを運ぼうとしただけだよ」
「それはえらく親切じゃない?郭にしては」
「元々僕は優しいからね」
英士は翼が掴んでいた手を振りほどいた。
「ほっといていいのかよ…」
「でも、あれを止めるの無理だろ」
火花を散らす二人を背後に、こそりと話す五助と柾輝に同意するように結人が息をつく。
「英士の奴もムキになってるからなー。俺は無理だと思うぜ」
「それは翼も一緒だ」
「じゃあ、あれ誰が止めるんだ?」
「「さぁ?」」
いつの間にか慣れてしまったかのような光景の背後で、 周りのものはただ自分に被害が来ないことを願っていた。
「そもそも椎名はと付き合ってるわけじゃないんだから、僕がに何しようが関係ないんじゃない?」
「悪いけど関係ないなんて言ってられないんだよ。一応幼馴染だし」
止まらない言葉と言葉の掛け合いが続けられる中、流石にここまで耳元で騒がれると、寝てなど居られるはずもない。
「う、ん…?」
がゆっくりと重たい目を開けて、周りをきょろきょろと見渡す。
「…二人とも何やってんの?」
「」
目を覚ましたに、英士は手を差し出した。
「ん?」
はまだ寝ぼけた思考の中で差し出された英士のその手を取る。
「さ、帰ろうか?」
英士はそう言ってを立ち上がらせ、連れてその場を去ろうする。
「…はい?」
「郭!いい加減にしろよ!」
「うわっ!」
翼は、無理やりの腕を自分のところへ引く。 その瞬間に、は一気に目が覚める。
「いい加減にするのはそっちでしょ?」
何故か翼を睨みつける英士。
え?なにこれ。
私が寝てる間になにかあったみたいだけど…私を挟んで喧嘩しないで欲しいです。
「あー!もう!止めなさい!」
意味が分からないものの翼と英士の喧嘩に嫌気がさしたはその場で叫んだ。
「は、僕と一緒に戻るよね?」
「え?」
しかし叫んだ効果もなく突如、英士に話をふられてしまう。
「、俺は大人しくしてろって言ったよな?」
「あーはい?」
なぜか怒っている様子の翼…。
って、なにこれ?何で私、こんなに攻められてんの?
はチラリと後ろを振り返る。
「「(悪い…!…!)」」
しかし唯一の救いである後ろに居る皆に助けを求める視線を送ってみても、ふいっと視線を逸らされた。
「(えええ!誰か助けてよー!)」
なんだかよく分かんないけど、今すぐにでもこの場から逃げ出したい!
すると、救いの手が舞い降りるかのようにの携帯が鳴り響いた。
「あ!あー!電話だー!じゃ、後でねー!」
「?!」
「ちょっと!お前の分のアイスどうすんのさ!まだ残ってるんだけど!」
「任せる!」
「はぁ?!」
翼が話し終える前にその場から足早に逃げ去った。
な、なにかわかんないけど…
「助かったー!」
でも実は電話なんかじゃなく、注文していた通販の商品が家に届くお知らせメールだったりして…。 いやー、次回もゲームを買う時にはお世話になります。と心の中では手をあわせた。
「そういえば翼と英士は何をそんなにムキになってたんだろう?」
…ま、いっか。
「今日の覆面怪盗!セロの放送は録画できれるかなー」
後でお姉ちゃんに聞いてみなければ…。
「強いぞ、強いぞ!セロは強いぞー!正義のみーかーたー♪」
うん!明日も頑張ろう!
が軽快な足取りのまま、部屋に向かったところで…。
一日目 終了