17話 信頼の宣戦布告


「ねー!きいた?!」
「聞いた聞いた!」
「サッカー部の部長があの美人マネージャーに告白したって!」

女の子は、本当に噂が好きだと思う。

「…ここにもっといい噂の種がいるのにね」
!」
「冗談よ!冗談!」
「もう!」

私の大親友であるには、最近になってやっと落ち着いてきた為、ようやく私がリョーマの家でお世話になっていることを話すことができた。

「リョーマ君、まだ怪我してんでしょ?」
「あ、うん。一週間くらいかかるみたい」
「左目だっけ?」
「そう。もうぱっくり!」

教室の窓際でとそんなリョーマの話をしていると、偶然そのリョーマがグラウンドを通りかかった。

「噂をすれば、ってやつ?」
「堀尾君も一緒みたい」
「そっか、一年生は理科なんだ」
「実験みたいだね」
「いいなー!あの先生の実験、超面白かったもんなぁ」
「リョーマは苦手らしいよ」
「え!なんで?!」
「リョーマにグループで実験なんて出来ると思う?」
「…まぁ、の話を聞いてる限りでは無理か」

なにやら実験器具を手に持っている二人と同様に校舎からでる一年生たちを上から見ていたが、突然、は私の方を見てにっこりと笑う。

「ここから呼んでいい?」
「誰を?」
「リョーマ君」
「はぁ?!何考えて…!」
「おーい!越前リョーマくーん!!」
「ちょっと!」

は、私が止めるのも聞かず教室から少し身を乗り出して大きな声で叫ぶ。 もちろん、そんなの声に教室からも下のグラウンドからも生徒達の視線が一斉に私達に集まった。



「おい。越前、呼んでるぜ?」
「…」
「あの人、前にテニス部に来てた人だよな?」
「さぁね」

不機嫌そうにしてるリョーマは、堀尾の言葉にも全く興味を示さず一回もの方を見ようともしなかった。
そんなリョーマの反応に腹をたてるは、の方を向いていう

「ちょっと!教育がなってないわよ!」
「別に、私が育ててるわけじゃないし」
「後輩のくせに可愛くない!」
「まぁまぁ。それにリョーマはのこと知らないんだし…」

それにとしては、なんともリョーマらしい予想通りの反応だ。

「…そうね。自己紹介しないとね」
「ちょっと…?」
!来なさい!」
「え!何する気?!」

あの大声に一度も振り向きもしないリョーマの生意気な態度が、の負けず嫌いに火をつけたらしい。 は、に引っ張られると、の肩を抱くように抱きしめられる。

「越前リョーマ君!宣戦布告よ!」
「それのどこが自己紹介よ!」

は突拍子もないの言動に思わず目を大きく見開く。

「これでも私はずっとの親友やってるのよ!は、昔も今も私のものなんだからね!手出したらタダじゃ置かないから!」
!何言ってるの?!」
「いいから。は黙ってて」
「ぇえ?!」

の声がグラウンドに響き渡った。



「何の話だよ?越前」
「はぁ…」

一つ大きなため息をついたリョーマは、の言葉にゆっくりと振り向く。

「ビンゴ!」
「え?」

は、リョーマが振り向くことを予想していたように得意げに笑う。

「…」
「…」
「おい!待てよ越前!お前もこれ持てって!」

リョーマはを黙って睨みつけるが、しばらくすると何事もなかったかのようにして行ってしまい、段ボールに入った実験器具を一人で抱えた堀尾は急いでリョーマの後を追いかけた。


「どうやら、当たりか」

は、そう言いながらゆっくりと私を離した。

「な、なにが?」

一体何がしたかったのか分からない私は、に尋ねる。

「まぁ、は気付いてないと思ったわよ」
「だからなにが?!」
「鈍いわねー…。そのまんまの意味でしょ。今のは宣戦布告なんだから」
「え?」
「越前リョーマになんか、負けないんだから」
「はぁ…?」

は、闘志に燃えていた。
幼いころから、知っている大事なダブルスパートナーであり、一番信頼における大事な親友である。 そんなの前に、リョーマは突然現れた。

「正直、気に入らないのよね」

今まで、二人の中で隠しごとなんてなかった。
が外国に行かなくてはいけないかもしれないと一番に聞かされて、行くのを止めて、相談にのったのも自分だった。 それなのに、一緒に住んでるなんて、最近まで知りもしなかった事実が悔しい。
そんなリョーマもも、お互いになにかしら特別な感情を抱いているのが見ていて分かるだけに、もっと悔しい。 まぁ、本人は気付いていないことだけれども…。越前リョーマの存在が気に入らない。

の一番は私よ。もう隠し事なんて許さないわよ」
…。うん、ごめん」

は、が自分を思ってくれている気持ちが素直に伝わってきて嬉しくなる。

「大好きよ!ー!」

は、両手を広げてに強く抱きつく。

「ちょっと!さすがにそれは誤解を招くわよ!」
の一番も、私でしょ?」
「…そりゃあね」
「じゃあ、問題なし!」
「あるでしょ!こら!離れなさい!」
「やだー!」
「あーもう!」

大事な生涯の親友

「いい?

遠くに一人でなんか行かせやしない。
誰だろうと、は渡さない。相手が誰だろうと関係ない。

「勝手に居なくなったら許さないから。外国だろうと私はどこだって付いてってあげるんだからね」
「うん…ありがとう

傷つけたら、ただじゃおかない。

「よろしい!」

覚悟しなさい…越前リョーマ!