12話 本当にドクター?シャマル来る!
「あれ?なんか、体ダルイや…。風邪引いたかな?」
足もふらつくし…。頭がくらくらとしてくる。額に手をついたとき、ふと俺は何気なく自分の掌を見て気付く。
「…って!!なんだこれー!!」
俺の手には何故かドクロの絵が描かれていた。もちろん、こんなのイラスト描いた覚えなんてない。
「ソレはドクロ病って言う不治の病だ。ツナ、死ぬぞ」
「いきなりー!!」
ひょっこりと道端の塀から顔を出してそう言ったリボーンは続けて言葉を発する。
「死ぬ気弾で10回殺される被弾者にとんでもねーことが起こるって言われてんだ」
「何でそんな大事な事黙ってたんだよ!!分かってたら…!」
はぁー…なんか考えるのも馬鹿らしくなってきた。 今日はも、委員会で今居ないし…。
「帰る」
洗ったらとれるだろう。そう思い、俺は素早く家へ帰った。
「ゴメンね!京子ちゃん!遅くなって!」
「ううん、大丈夫だよ」
「じゃ、帰ろっか」
「うん」
私は、先日さぼったことで、恭ちゃん先輩にこってり咬み殺されてきました…。おかげでツナと一緒に帰ることはできなかったが、なんでも京子ちゃんがツナにお兄さんから頼まれたボクシングの本を渡しに行きたいらしく、一緒に帰る事になって終わるまで待っててくれた。
「お兄ちゃん、すっかりツナ君の事気に入っちゃって」
「相変わらず、極限男だよね。お兄さん」
「見ててこっちがヒヤヒヤしちゃうの!」
「確かに、心臓いくつ有っても足りないよね…」
「でも、本当は優しいんだよ」
「うん。それは京子ちゃんとお兄さんを見てたら分かるよ。すっごく」
なんてお兄さんの会話を和やかに京子ちゃんとしていると、なにやら騒がしい声がツナの家の方角から響いてきた。
「ツナ?」
「どうかしたのかな?」
「とりあえず、行ってみようか。京子ちゃん」
「うん」
私は、いつもツナの家に入るようにドアを開けた。
「シャマルさん!貴方、医者なら助けてください!」
「今までの俺の患者に男はいねぇ」
「そんなー!」
医者だっていってたけど、一向に見てくれる気配はない。 リボーンの言っていた通り、ドクロは広がる一方で、俺の恥ずかしい過去が刻まれている。こんな恥さらしたまま死にたくない!
「終わりだ…」
俺は、死ぬんだ。ってそう思った時…ドアが開き、思わず外の光に目を細めた。
ガチャ
「ツナ?」
「…え」
「とりこみ中かな?」
「京子ちゃん!?!」
なんで、京子ちゃんがと一緒に俺の家なんかに…!
「お兄ちゃんに頼まれて」
「ボクシングの本だってー」
か、感激だ…!理由はどうであれ、京子ちゃんが死ぬ前に会いに来てくれるなんて…。
「…あれ?」
「ツナ君、ボディペインティングしてるの?」
「いや!これは!!」
京子ちゃんにドクロ病の症状を見られないように思わず体を手で覆った。
「」
「ん?」
リボーン君が私の肩に乗っかり、こっそりと今の状況について耳打ちをする。
「えええ!じゃあツナ、死んじゃうの?!その死ぬ気弾の副作用の、えっと、ドクロ病とかいう病気で?!」
「ぁあ、シャマルが診ねぇ限りな」
「シャマル?」
「あいつだ」
私はリボーン君が指を指す方を見た。
「君、かわいいねー!」
どう見ても京子ちゃんに絡んでるただのエロいおじさんの風貌だけど、今はそんな事言ってる場合じゃない。ツナが死ぬなんてやだ!私は、急いでシャマルさんという人の前に出る。
「あの!シャマルさん!」
「んー?なんだい?君も可愛いねー!」
「えっと、ツナの事、診てあげて下さい!」
「、お前…」
「君なら直ぐに診てあげるよー」
シャマルさんが私の手を掴んで、冗談めかしたような口調でそう返しながら顔を近づける。
「あの、私じゃなくて!ツナを!」
「かわいいねー。こんな奴放っといておじさんとさ…」
「ちょ、ちょっと!ちょっと!い、いいよ!!危ないから離れてろよ!」
「でも…!」
「ったく、なんだよお前は。さっきから邪魔しやがって」
シャマルさんは、自分と私の間に入ったツナを睨んで不機嫌そうな表情を見せるも、私は、ツナの背後からシャマルさんに訴えかける。
「お願いします!シャマルさん!」
「うーん。ってもなぁ…」
「私にとってツナは大切な人なんです!私も、出来ることならなんでもします!だから!」
「…」
思わず私は、ツナの腕を握り、言葉と共に手に力が入ってしまう。 涙が出そうになるのをこらえていると、ポン。とシャマルさんは優しく私の頭の上に手を置いた。
「へ?」
「わかったよ」
「え…」
「そいつを診てやるって言ってんだよ」
「ほ、本当ですか?!」
「あー、上だ上。上行くぞ」
そう言ってシャマルさんはツナを連れてツナの部屋へと入って行ってしまった。
「じゃあ、。これ」
「うん。ツナに渡しておくよ」
「ありがとう!じゃあね」
「バイバイ!」
私は京子ちゃんからツナに渡すはずだった本を私が代わりに受け取り、京子ちゃんを送り迎えた。 事実を知らない京子ちゃんを上手く誤魔化すのにも苦労をしたが、なにより、ツナが治療を受けることができたことに対して思わず安堵の息が漏れた。
ツナ、もう大丈夫かな?私はスタスタと階段を上がり、ツナの部屋へ向かった。
「これで病気は相殺されたはずだぜ」
「文字が消えていく!」
ドクロ病の対となるエンジェル病のシャマル御得意のトライデント・モスキートにより、見事に病気は完治した。
「ありがとうございます!」
「ま、せーぜー人生をエンジョイしろよ」
「あの、でもどうして急に治療してくれる気に?」
「ぁあ?お前のためにやったんじゃねーよ」
「え?」
「あのお嬢ちゃんのためだよ」
「それって…」
「あんなに泣きそうになって頼まれちゃ、断れねぇだろ?男として」
「…」
「ったく、大事にしてやれよ?まったく」
「…は、い」
シャマルの言葉に思わず返事を返したが…シャマルが部屋を出た後、入れ替わるようにドアが開いた。
「ツナ?」
「!!!」
「さっきシャマルさん出てきたけど…大丈夫?ドクロ消えた?」
眉を下げて心配そうな表情で俺を見る。 さっきのシャマルの言葉が頭によぎり思わず、体温が上がるのが自分でも分かった。
「う、うん!心配掛けてゴメン。あの、それで、さ…」
「なに?」
「今日は、ありがとう!」
「え…」
「シャマルに頼んでくれて、さ」
「わ、私は何もしてないよ!」
照れた様に両手を左右に振る。は、いつもそうだ…。人の為に必死に動いて、それでも、「自分は何もしてないよ」って、「良かった」って俺に笑うんだ。
「ううん!のおかげだよ」
「そんなこと…」
「あるよ!あの!だからさ!」
「ツナ、さっきからどうしたの?」
俺の様子がいつもと違うと勘付いているに、もういくら繕うっても無駄だと俺は意を決したようにを見る。
「何か欲しい物とか、ある?」
「…へ?」
「だ!だから、お礼になにか、にしてあげたいなーって、でも、俺、そういうの分かんないし…」
「あはは!別にいらないよー!…うーん。そうだなぁ。でも、強いて言うなら、ツナが欲しいな」
「お、俺は真剣に聞いてるの!」
「超真剣だよ!」
そう言って、はぐいっと俺に顔を近づける。
「抱きしめて」
「は?」
「私のこと、抱きしめて!」
「なっ…!!!」
「私はツナが生きててくれたからそれでいいの!だから、それ以外はいらないの!」
「お前は…またそんな恥ずかしいセリフを…ああー!もう!」
俺は、その場にしゃがみ込んで、おそらく真っ赤になっているであろう顔を隠しながら頭を抱え込んでいた。
「ダメ?」
しゃがみ込んでいる俺と目線を合わせようと膝を軽く折った。お願いだからそんな目で見ないでよ…。
「っ…!今回だけだからな!」
俺は立ちあがり、グイっ!との手を掴み自分の方に引き寄せる。これは自分の意思じゃない。頼まれて仕方なくだから…。なんて、言い訳がましいことを心の中で呟く。
「ふへっ?!」
「めちゃくちゃ恥ずかしいんだからな!これ!」
「ツナ!」
「っていうか…俺もやっといてなんだけど、お礼がこんなんでいいの?」
「うん。これがいいの」
「そ、そう…」
「ごめんね、無理させちゃって」
「絶対もうしないからな!」
「大丈夫だよー。次からまた私が抱きつくから」
「そういう問題?!」
「うん。そういう問題なの。だから今だけ…もうちょっと…」
「?」
は、俺の背中に手を回し、胸元に顔をうずめるように抱きついている。でも、なぜだろう。この時のは、こんな近くにいるのに…なぜか…なぜか、すごく今にも消えてしまいそうな、そんな感じがしていたんだ…。