13話 雲雀恭弥と沢田綱吉


「今日のお昼はハンバーグっと…。すみませーん!お弁当くださーい!」

皆さんこんにちは。私は仕事中の恭ちゃん先輩に頼まれてお昼を買いに来ました。ついでに私の分のご飯代まで貰ってしまった…。

「本当は凄く優しいんだけどなぁ」

恭ちゃん先輩の優しさは分かりづらい。さっきだって…。

、なにか買ってきて」
「え。あー…珍しいですね。私にお昼ご飯の買い出しを頼むなんて」

ちらりと時計の時間を見て、恭ちゃん先輩の言いたいことを理解する。 私は、再び恭ちゃん先輩の方を見て返事を返した。

「手が離せないからね。暇そうなのも君だけだから」
「なんですかそれ?!」
「なんでもいいから買ってきて」
「分かりました。ハンバーグ弁当ですね」
「…言った覚えないんだけど?」
「私には聞こえました」
「まぁ、なんでもいいけど。5分以内で宜しくね」
「えっ!いや、無理ですよ!」
「そうじゃないと…」
「咬み殺さないで下さい!!」
「これ、お金」
「はい。確かに…って、ちょっと多くないですか?」

私は大人しくお金を受け取ったものの、ふと疑問に思ったことを口に出す。

「…ほんと鈍いね。君も」
「え?」

ため息を吐いた恭ちゃん先輩が、仕方ないと言ったように私を見て再び口を開く。

「二人分だよ。それ」
「二人分って…草壁さんのもですか?」
「違うよ、今日は午後から」
「ですよねー?じゃあ誰の…」
「あのね…。好きなの買ってきたら?って言ってるんだけど」
「好きなの…って、まさか私の分のお金ですか?!」
「さぁね」
「えええ!どっちですかー?!使いどころに困ります!」

ツナの反応がいつも分かりやすいだけに正直、恭ちゃん先輩はとても分かり辛い…!

「でも、いい先輩なんだよね」

そんなことを思いながら、無事にお弁当を買い終えた私はふと校舎の上を見上げる。

ドカン!

「…どかん?」

こんな真昼間から花火か何かしているのだろうか…。 聞こえてきた大きな爆発音が鳴り響くと、暫くして校舎の窓からモクモクとした黒い煙が出てきた。

「え。火事…?って、これ、うちの学校…」

いや、ちょっと待って。そもそもあの煙が出てる部屋って…。

「応接室?!」

まさか…とは思いつつも、もしかしたら、恭ちゃん先輩がいるかもしれないという恐怖を抱えながら、私は黒い煙が上がっている方角を目指して走り出した。

「恭ちゃん先輩?!」

私は、勢いよく応接室のドアを開ける。

「…なに?騒がしいよ」
「なに?って、いま煙が出てましたけど?!」
「ぁあ。ちょっと来客がね」
「どんな来客だ!どんな!!」
「赤ん坊と多分…」

恭ちゃん先輩はまっすぐに私のことを見る。

「どうかしましたか?」

私が首を傾げると、再びそっぽを向いてソファーに腰掛けた。

「いや、なんでもないよ。君には関係ない来客だよ」
「そうですか?」
「それより、買ってきたの?」
「あ、はい!恭ちゃん先輩!」

私は袋から1つお弁当を取り出し、恭ちゃん先輩に差し出す。私の手からお弁当を受け取りつつも、恭ちゃん先輩は眉間に皺を寄せて不機嫌そうな表情を見せる。

「ねぇ…いい加減にその呼び方、やめてくれない?」
「嫌です。気にいってますから」
「なにそれ…」
「あ、恭ちゃん先輩!そういえば、もうすぐ体育祭ですね」

私が思い出したようにそういうと、ああ。と恭ちゃん先輩も思い出したように私にいう。

「暫くスケジュールいっぱいだから」
「えー!じゃあ本番は?!」
「仕事だよ。君も」
「はい!幼馴染の勇姿が見たいので、当日だけでもお休みが欲しいです!」
「知らないよ。そんなの」
「恭ちゃん先輩の鬼ー!!」

体育祭は、見れそうにありません…。恭ちゃん先輩から、「これ」と渡された体育祭の仕事の割り振りのプリントに目を通す。

「それになんで私、校門の受付なんですか?!」

しかもほとんど一日中だ…。
これだと、ツナが活躍するところは見れそうもないな…。私が、はぁ…と深くため息をつく。

「サボると、どうなるか分かってるよね」
「ううう…。恭ちゃん先輩、意地悪です!」
「何とでも言いなよ。君と幼馴染君のことなんて、僕には関係ないからね」
「いいですよーだ!奈々さんにビデオ撮ってもらうんで!」
「…幼馴染君、ね」
「どうかしました?」
「別に…(赤ん坊と、あれが…君の幼馴染君、ね)」

少しだけ不敵に微笑んだ恭ちゃん先輩に私は疑問を抱きつつも、再び体育祭の項目が書かれたプリントへと目を移した。



「はっくしゅん!」
「風邪か?ツナ」
「いや、そんなんじゃ…」
「気をつけてくださいよ!10代目!」
「そうだぜ、ツナ」
「う、うん。ありがとう。獄寺君、山本」

なぜだろう…。今、すごく寒気がした気がするんだけど…。

「やっぱり風邪、かな?」
「だらしねーなー」
「うるさいな!リボーン!ってか、もうあんな無茶はごめんだからな!雲雀さんに目付けられたらどうするんだよ!」

この時、俺は雲雀さんが既に俺のことを敵対視していた。なんて…まだ知りもしなかったんだ。