14話 保育係は任せなさい!
「ツナ、恰好いいよ!ほらほら!」
「頼むから、せめて自分の家で見てよ!!」
私は今、ツナの家でこの前、私が風紀委員のお仕事で見れなかった体育祭でのツナの勇姿を奈々さんが撮ってくれたビデオで、拝見させていただいております。
「母さんもいつのまに撮ったんだよ!こんなの!」
「ちゃんに頼まれちゃったもんだから、つい私も張り切っちゃって…」
「ついって、なんでこんなところまで全部撮ってんだよ!」
「あ!ツナ、大変だ!」
「なんだよ!」
「遅刻ー!」
「はぁあああ?!」
いつも通りバタバタとした朝です。
ギリギリながらも遅刻せずに済んだ私達は、つまらない授業と向き合っていた。
「(この先生の授業、面白くないんだよね…。教科書読んでる方がまだ分かりやすいわ)」
なんて思いつつもノートを取っていた時、周りが何故か騒がしいのに気がついた。
「え…なに?」
周りから聞こえてくる単語は、パンダやら牛やら…。 なんのこっちゃ…と、私は皆の視線が集まっている方を見た。けど、そこにいたのはパンダでも牛でもなかった…。
「ラ、ランボ君?!」
「ガ・マ・ン…」
「ランボ?!お前、なんで?!」
ランボ君の存在に気付いたツナが思わず席から立ち上がる。
「ツナ…ちゃ、チャックがこわれて…おしっこできない」
周りから、一斉に笑いが起きた。そんな中で、ツナは慌ててランボ君の方へと近づく。
「何やってんだよ!早くトイレ行けよ!」
「ガハハ!リボーン発見!」
「お前今それどころじゃないだろ?!漏れそうじゃなかったのかよ!」
「あ…」
「ん?」
「うわああああん!!」
「(バカすぎー!!)」
席からその様子を見ていた私だったが、流石にランボ君がお漏らししてしまったのでじっと見てはいられなくなり、席を立ち、私もツナとランボ君の方に近づく。
「ツナ」
クラスが騒がしい中で、私はツナの方に声を掛けて、お漏らしをしたランボ君を持ち上げた。
「!」
「ランボ君、トイレ連れてくね」
「え、あ。うん」
「大丈夫?ランボ君」
「う、わぁああん!ー!!」
「はいはい」
こんな出来事がありつつも、その後は何事もなく全ての授業を終えた。
私は、直ぐにツナの家にランボ君の様子を伺いにきた。
「、今日は本当助かったよ」
「ううん!どういたしまして!…なんて、大したことしてないけどね」
「いや、まじでランボどうしようか困ってたからさ…」
「あはは。でもツナにそう言ってもらえるなら、嬉しいかな!」
そう言って私がツナに笑いかけると、ツナが顔を真っ赤にしながら私に言う。
「だ、だから、そういうこと簡単に言うなってー!」
「あ。ツナ、照れてる?」
「だーもう!」
「お前ら、こんなとこでイチャついてるんじゃねーぞ」
「あ。リボーン君」
「リボーン!お前どうにかしろよ!ランボのこと!母さんだって、ちゃんと見ててよ!」
「お母さんに怒るのは可笑しいんじゃないかしら?」
「うわあああん!」
奈々さんの足元で泣きつくランボ君。そんなツナと奈々さんのやり取りを見ていたビアンキさんが息を吐く。
「そうよ。そんなにイヤならアホ牛に保育係をつければいいでしょう?」
「保育係?!」
「そんじゃ、俺の知り合いの保育係を手配してやろうか?」
「リボーン!」
ということで、次の日学校で保育係を紹介してくれるってリボーン君に言われて校舎裏まで来てみたんだけど…
「何スか、10代目?」
「小僧に呼ばれてきたんだが」
「武と獄寺…」
「…ちょっと」
「ん?」
思わずツナは、リボーン君に詰め寄る。
「話が違うだろ?!保育係紹介してくれるんじゃなかったのかよ!」
「紹介してんじゃねーか。お前の部下から決めるに決まってんだろ」
「何わけわかんないことを!」
ツナが困惑しているなかで、また頭を抱えそうな問題がツナを襲う。
「ランボさん登場ー!」
「ランボ君!」
「こんな時にー!」
「またウゼーのがきやがった」
「そんな風に言ったら可哀相だよ。獄寺」
「てめぇは関係ねーだろ!」
「ランボ君、可哀想じゃない!」
「ガハハー!」
「こんにゃろー!!」
「きゃあー!」
「まぁまぁ」
今にも手をあげそうな獄寺と私の間に、武が仲裁に入ってくれたおかげでやっと事態が収まった。
「んじゃ、ランボの保育係の適性テストを始めるぞ」
「なっ!何言ってんだよ!今の獄寺君の適性のなさを見てただろ?!」
「こいつの保育係ってのは遠慮しときます。こいつ大嫌いなんで」
「俺はいいぜ」
「武、いいの?」
「ああ。今日は何の遊びだ?」
「(山本節でたーっ!)」
「ちなみに保育係になった奴が、ボスの右腕だからな」
リボーン君の言葉で今にも帰りそうな勢いだった獄寺の動きがぴたりと止まった。
「俺、本当はランボ大好きです…」
「(無理ありすぎー!)」
そんな獄寺の様子を呆れて見ていると、リボーン君が私に声を掛ける。
「ちなみに、」
「なに?」
「お前は手出すんじゃねぇぞ」
「なんでだよ!どう考えてもが一番適任だろ?!」
「私も保育係やってもいいよ。ツナが助かるなら」
私がそういうと、リボーン君が銃を取り出し私に向けた。
「「え…」」
「お前らごちゃごちゃうるせぇぞ。いいから手出すなって言ってんだ」
「は、はい!」
リボーン君の圧力に負けて、私とツナは大人しくリボーン君の言葉に従うことになった。
「ルールは簡単だぞ。あいつを笑わせた方が勝ちだ」
「うわぁあああん!」
ランボ君が泣きわめく中で、獄寺が前へ一歩でた。
「俺、先行でいくぜ」
意外にも、獄寺と山本の間で勝負が白熱しているらしい。
「…仲直りしよーぜ」
獄寺は嫌々ながらもそう言って、ツナの右腕のためにランボ君へ近寄る。 だが、その時にランボ君から渡されたのは…。
「ん」
「うわっ!!」
ドォン!!
手榴弾だった。瞬時に、手榴弾と判断した獄寺は誰もいない方角へ手榴弾を放るも一歩遅ければ巻き込まれていたところだ。
「やっぱり死んでこい!!」
「くぴゃあっ!!」
「ストップ!ストーップ!!」
この二人が上手くいくわけもなく、ランボ君に手をあげようとする獄寺と泣きじゃくるランボ君の間にツナが止めに入ったところで勝負が中断された。
「当然って言えば当然だよね…」
「はは、次は俺だな」
「そうだぞ」
「山本、子供に好かれそーだもんな」
「どうするのかな?」
「見物だな」
私達は静かに武とランボ君のやり取りを観戦する。武は姿勢を低くしてランボ君と視線を合わせた。
「お前、キャッチボールやったことあっか?」
「なるほど!」
「キャッチボールだね」
「ランボも興味示してるよ!」
「ほらいくぞー」
ランボ君も武の声に反応して、ボールを取る姿勢に入る。これは安心して見ていられそうだ。と思っていたその矢先…。
「そー…」
「ん」
「れっ!!」
ブォン!!
「…は、はい?」
私達の目の前を凄まじい勢いでボールが通り過ぎた。
ゴッ!
「ぶっ!!」
武が投げた力強いボールが、ランボ君の顔面に直撃する。
「ぇえええ!」
「ランボ君?!」
「わりぃ!野球の動作に入ると加減が出来なくてな!」
「(なんじゃそりゃー!)」
「うわぁあん!ー!」
「わわっ!」
私は思わず泣き付いてきたランボ君を抱き上げる。
「山本にこんな恐ろしい一面が合ったなんて…」
「あいつ初めていい仕事しましたね」
「なに言って…」
「何やってるんですかー!!」
「え?」
私の言葉を遮り、目の前に現れたのはハルちゃんだった。
「ハルちゃん!」
「ちゃん!お久しぶりです」
「なんでお前がうちの学校にいるんだよ!」
「新体操部の交流試合に来たんです」
ハルちゃん、新体操部なんだ。スタイルいいわけだよねー…と私は納得しながらハルちゃんの方を見る。
「やっとツナさんを見つけたと思ったら、ランボちゃんを泣かして!」
ハルちゃんは私が抱いていたランボちゃんを抱きかかえる。
「たとえツナさんでもランボちゃんをいじめたらハルが許しません!!」
ハルちゃんがすごく頼もしく見える…。だけど未だに泣きわめくランボ君は、ごそごそと自分の頭の中を探る仕草をする。
「うわぁああん!」
「はひ?」
「あ!」
ドゴオン!
ランボ君は頭の中から10年バズーカを取り出し、その場で発射した。
勿論、そこに現れたのは10年後のランボ君なわけで…。大人ランボの重さに支え切れなくなったハルちゃんはランボ君を落下させた。
「誰なんですかー?!」
「あ、そっか」
「ハル、大人ランボに会うの初めてだっけ?」
「エロ!変態!」
パンパン!
「お、往復ビンタ…」
どうやらハルちゃんは大人ランボ君が苦手のようだ。その様子を見て、調子をよくした獄寺が大人ランボ君をイジメにかかる。
「お、俺…失礼します」
ふらふらとした足取りで大人ランボがその場を去ろうとしたところに、武が声を掛ける。
「おい!角落としてるぞー!ほーら…よっ!!」
ゴォッ!
不可抗力にも武が投げたランボ君の角がランボ君に凄まじい勢いで直撃した。さすがに見ていて可哀相になってきた私は倒れた大人ランボ君の所へ駆け寄る。
「大丈夫?」
「さん…貴女だけはいつもお優しい」
「あはは…」
大人ランボ君の言葉に少しだけ呆れていた私だったが、咄嗟に起き上がった大人ランボ君に両手を握られる。
「さん…」
「え?」
顔が近いよ!近い!ランボ君ー?!一体何があってここまで大人になっちゃったんだろうか…。投げ飛ばすのは簡単だが、相手はランボ君なわけだし…。と私がどうしたものかと悩んでいた最中、誰かに後ろから両肩を掴まれる。
「ちょっとタンマ!」
「?」
「調子に乗るんじゃねー!」
ドガッ!
「ぶぉっ!!」
私の背後で大人ランボ君は、リボーン君の蹴りが炸裂し、再び倒れてしまった。
「ツナ!」
どうやらリボーン君の攻撃の直前に、ツナが私を大人ランボ君から離してくれたおかげで巻き込まれずに済んだようだ。
「あっぶねー!」
「助けてくれたの?」
「え、あ。いや」
「それとも妬いてくれたのかな?」
「なっ!」
私の肩を掴んでいたツナの顔は一気に赤くなり、急いで私から手を離す。
「えへへー、どっちでもいいよ!ありがとう!」
「ちょっ!…はぁー。には敵わないよ」
私がツナに抱きつくと、体が固まっていたツナだったが暫くして私の後頭部にツナの手が添えられた。
「だって、嬉しかったよ?」
「そ、そう?」
「うん!」
「うわぁああん!」
「「…あっ!」」
ランボ君の大きな泣き声が後方から聞こえてきた私とツナは、現状を思い出したようにランボ君へと駆け寄る。
「悪い!ランボ!」
「大丈夫?!ランボ君!」
「だからには保育係させたくねーんだ」
「どういうわけだよ!リボーン!」
「こいつが調子にのるんだもん」
「急に可愛い子ぶるなー!」
「アハハ…」
「ツナだって嫌だろ?」
「な、なんの話だよ!」
「ってわけで、やっぱツナが面倒見るしかいねーな」
「おい!流すな!それにお前、最初からそのつもりだろー!」
「まぁまぁ、ツナ。私も手伝うから」
保育係は、やっぱりツナのようです。