18話 さらわれたツナ


「ツナ、早くー!」
「分かってるよ!」

不覚にも昨日の騒動で私まで寝坊してしまった…。せかす私にツナも慌てて玄関から出てきた。

「あ!ディーノさんの!」
「むかえなんて頼んでねーぞ」
「ディーノさん!」

ツナの家の前には、ディーノさんの部下でいっぱいです。迎えじゃない、なんてバレバレの嘘言ってる部下たちにディーノさんは息を吐く。改めて、部下から慕われているディーノさんの凄さが感じられる。

「おはよーございます!10代目!」
「わっ!」
「ご、獄寺君!」
「早起きしたのでブラブラしてたらここについちゃいました」
「…同じこと言ってる」

突然やってきてディーノさんの部下たちと同じようなことを言う獄寺に私は、深くため息を吐く。

「なんだ、馬鹿女。お前もいたのか」
「馬鹿女じゃないわよ!私はっていう名前があるの!」

いつも馬鹿女と呼ぶ獄寺に言い返すも、獄寺は私を無視してふいっとツナの方を見る。

「それよりなんすか、この連中?」
「無視したー!」
「まぁまぁ」

ツナに宥められつつも、私はムっと獄寺をにらみつける。

「よぉ、スモーキン・ボム。会うのは初めてだな」
「そのタトゥー…跳ね馬のディーノ」

どうやら、同盟ファミリーというだけあって獄寺はディーノさんのことを知っているようだ。そんな時、後ろから聞きなれた明るい声が私達の耳に届く。

「はよ、ツナ!!お!獄寺もいるじゃねーか」
「おはよう!武!」
「何やってんだおめーら、遅刻するぜ」
「山本!」

そう言うと武はディーノさんに軽く挨拶をして、無理やり私達を引っ張って行った。

「へー、ディーノさんが…」
「今じゃ同盟の中でも第3勢力ですしね」
「そうなんだ」

獄寺いわく、先代が傾けた財政を立て直したのがあのディーノさんだという。ディーノさんの凄さを改めて私もツナも痛感していた。

「どっちにしろ俺は好かねースけどね」
「え?なんで?」
「年上の野郎は、全部敵スから」
「(範囲広ッ!)」
「じゃあなんで、私に対してもそんな態度なのよー!」
「うるせぇ!馬鹿女!てめぇは10代目に馴れ馴れしいんだよ!」
「あー!また言った!次言うと、その煙草ひったくるわよ!」
「やってみやがれ!馬鹿女!」
「(絶対、こいつ私のこと舐めてる!)」

一度、私が獄寺に仕掛けてやろうかとしたその時、ギャギャ!という音を立てて真っ黒な車が私達の目の前に停車する。

「え!?」
「ツナ!」
「10代目!」
「うそー!!!」

凄まじいスピードでツナが、私達の目の前で攫われてしまった。ツナを乗せた黒い車はまっすぐに走って行ってしまう。

「ツナ…!」
「ありゃ、ここら一帯を締めてる桃巨会の車だな」
「え!」
「リボーンさん!」

どこからか私達の様子を見ていたのか、突然現れたリボーン君が私達に言う。

「中学生のお前達が敵うわけねぇ、ここは警察にまかせろ」

リボーン君の言葉に、シンとした空気が流れる。私達がこうしている間にも車はもうどんどん先に進んでいるのかと思うと…居ても立ってもいられない。

「まかせられません!」
「ごめん!リボーン君!私も行きたい!」
「警察は頼んだぜ、小僧!」
「てめぇは、残れ!馬鹿女!」
「いや!それにあんた、桃巨会が何処にあるか知らないくせに!」
「そりゃそうだ」
「にゃろー!」

私達はリボーン君を残して、猛ダッシュで車を追いかける。有名なだけあり、桃巨会の場所はすぐに分かった。


「てめぇはここにいろ!」
「いや」
「まじでぶち殺すぞ!てめぇ!」

ここまで来たドアの前でも獄寺は私に残れと告げる。

「ハハッ。獄寺の奴、が心配なんだぜ」
「えー、それはないよ。私が気に入らないだけだよ」

武ならともかく…獄寺が私なんかを心配するようなキャラではないとよく知っているだけに、ここは私も引きさがることができない。

「うるせぇ!てめぇも来んな!」
「まぁ、そう言うなよ。も危ねぇから俺たちに任せとけって」

そう言って、二人は私を残して部屋の中に入っていった。
「武まで…。でも、そう言われても…」

部屋の中から、バキ!と嫌な音が聞こえてくる。

「私だって心配なんだって!」

私はゆっくりドアを開けて部屋の中に入ったが、ドアの近くに立っていた男の人と目があう。

「あっ!」
「なんだ、この女。お前もあいつらの連れか?」

そういって男の人は、私の腕を強く掴む。

「ちょっ、離して…!」
「こっちに来い」
「やだ…ってば!もう!」

ゴン!

「ぐぉ!」
「あっ」

引っ張られそうになった瞬間、思わず体が反応して前蹴りをかましてしまった…。

「ごめんなさい!つい!」

私が倒れた男の人の側にしゃがみこんだ瞬間、背後からの殺気を感じる。

「っ!」

ドン!

咄嗟に私は、私に棒で振りかかろうとした男の人の攻撃を交わし、そのまま男の人の足を足で払うと見事に転び、床に頭を打って倒れ込んだ。

「ええー…」

この人達、本当にヤクザなのかな…。多少、私も空手の心得がある人間とはいえ、弱すぎる気がする…。と、私が思ってたのもつかの間、奥へ進んで見ると武も獄寺も、怪我一つなく倒していた。 元気な武と獄寺の姿を見て、私はほっと胸を撫で下ろした後、床で倒れこんでいる男の人に声を掛ける。

「あの…ツナどこにいるか知りませんか?」
「うう…」

この分だと返事はなかなか返ってきそうにないだけに、勝手に事務所を探索させてもらおうかと思い、立ちあがるとドアが大きく開き、誰かが入ってくるのが分かった。

!」
「え、ツナ?!」

私はこちらに駆け寄ってくるツナに近づき、そのままツナに抱きつくとツナは、ほっとしたように息を吐いた。

「10代目!」
「元気そうじゃねーか!」
「え、あーうん」

ツナに気付いた武と獄寺もこちらに駆け寄ってくる。

「たいしたもんだぜ」
「ディーノさん!」

辺りを見渡してそう言ったディーノさんに対して、ツナは思い出したように私の肩を掴む。

「あ!、どこも怪我してない?!」
「え?うん。大丈夫だけど…」
「よかったぁ」

どうやら相当心配してくれていたようだ。心配してくれたツナには悪いが少しだけ嬉しくなる。その後、私達は何事もなかったかのように帰ろうと足を進めたした時だった。

「何してくれてんだ?」

事務所の奥から先ほどの若い男の人達とは比べ物にならないくらい悪そうな顔をした人達が出てきた。ディーノさんが大人の対応をしようとしてたんだけど、そんな話など通る相手ではなかった。

「力ずくで帰るしかねーな」

交渉決裂で、結局こうなってしまう訳だけど、今、ディーノさんの近くには部下の人たちがいないから…。

「いってー!!」
「なにすんだ!テメー!!」

ムチを振るおうとしても、周りに被害がいくばかりだ。

「ツナ…」

私は、キュッとツナの服の袖を引っ張ると、私の言いたいことを察したようにツナが身を引く。

「えっ!いや、俺は無理だよ!」
「なに言ってやがる。助けるのはボスであるお前だぞ」


ズガン!


リボーン君は容赦なく死ぬ気弾をツナに命中させた上に、追加のゲンコツ弾をツナの手にめがけて撃つ。

「…リボーン君、流石」
「当然だぞ」

ツナはどんどん怖い大人の人達を倒していく。そんな姿に触発されたように、武と獄寺も前に出る。

「10代目!」
「後ろは俺達にまかせろ!」

一方、ディーノさんもいつの間にか来ていたロマーリオさん達の姿を見るや否や、人が変わったように華麗なムチ裁きを見せる。

「よっしゃ!暴れるぞ!」

その様子を遠目で見ていた私とリボーン君だったが、相も変わらず女と子供ということもあり、襲いかかってこようとする男達の存在に戦わざるを得ない状況になる。

「もう!しつこい!」

不本意ながら私も、襲いかってくる男達を回し蹴りと手刀で蹴散らしていく。 こうして、桃巨会は壊滅した。でも、後からディーノさんに聞いた話しなんだけど、どうやらツナを攫ったのは、ディーノさん達で私達を試すための演出だったらしい…。



もなかなかじゃねぇか」
「昔、護身で空手やってたってだけなんですけどね…」
「ま、あれくらいは当然だな。俺が唯の女をファミリーに入れると思ってんのか」

ディーノさんもリボーン君も褒めれてるんだろうけど、女としては複雑な気分だ。

「俺は心配したよ」
「えへへ、ツナが心配してくれるのは嬉しいな」

そういって私がツナに抱きつくと、「おわ!」っとツナが驚いたように声を上げる。

「10代目に気安く触るんじゃねぇ!この暴力女!」
「誰が暴力女よ?!」
「てめぇ以外いねぇだろ!バーカ!」

獄寺に触発された私はツナから離れて、獄寺の前に立つ。

「毎回毎回…なんで喧嘩腰なのよ!」
「うっせぇ!」
「ちょ、ちょっと!獄寺君!」

私と獄寺の間にツナが割って入って止めようとする。

「10代目!なんでこんな奴庇うんスか!」
「いや、は女の子だし…」
「こんな暴力女、女扱いする必要ないスよ!」
「っ!獄寺のバーカ!」
「なんだと…っ!」

ゴッ!

「いっ!!」
「はぁー…スッキリした!これでお相子にしてあげる。ばいばい」

怒って私に向かってこようとした獄寺の鳩尾の部分を力の限りのぶん殴り、その一言だけ告げて私はその場を去った。

「やっぱすげーな、
「右ストレート…」
「10代目!あの女、まじで殺していいっスか?!」
「駄目だって!獄寺君!」
「はは、俺は好きだぜ。のこと」
「ああ?!てめぇ、可笑しいぞ!絶対!」
「そうか?ツナもそう思ってるだろ?」
「お、俺?!いや、俺は、幼馴染だし…」
「10代目ー!そうやって甘やかすからあいつが付け上がるんスよ!」
「ええ!」
「まだまだ、ガキだな」