19話 ツナと雲雀の入院
「ツナの病室どこかな?」
どうやらツナは、ディーノさん達とトレーニングに行った時に足を捻らしたらしく、この並盛中央病院で入院することになったそうだ。
確か恭ちゃん先輩も風邪をこじらせて、ここで入院すると言って暫く休んでいたが…。
せっかく果物も持ってきたことだし、恭ちゃん先輩にも届けてあげようと私はひとまずナースセンターへと向かい、病室を尋ねる。
「えっと、恭ちゃん先輩の病室は…」
って…あれ?
「ツナ?」
「ひっ!…って、?!」
なぜか病室に入らず、廊下で松葉杖をつきながら慌てまくっているツナの姿が目に入った。
「なにやってるの?寝てなきゃダメなんじゃ…」
「いや、こそ、なんで…。って、あ!雲雀さんのお見舞い?」
「うん!あとでツナの病室にも行こうと思ったんだけど、ツナの病室ってここだっけ?」
さっきナースさんに聞いたら、違う部屋だった気がするんだけど…。と私がツナに尋ねると、ツナは私の手を掴み、なにやら訴えかけてくる。
「き、聞いてくれよぉ!」
「えぇ?!」
私は、ツナに苦痛の入院生活の話を聞かされました…。
「ええ!恭ちゃん先輩そんなことしてるの?!」
「え…(恭ちゃん?)」
物音をたてたら咬み殺されるなんて…。まぁ、恭ちゃん先輩らしいが、これじゃあ、いくらなんでもツナが可哀相だ。
「大丈夫だよ!ツナ!私に任せて!」
「え!どうするの?!」
「駄々を捏ねるの」
「え…」
私はがちゃりと恭ちゃん先輩が寝ているであろう病室のドアを開けた。
「恭ちゃん先輩!こんにちわ」
「…君、何してるの?こんなところで」
「お見舞いです!…じゃなくて、私のツナになにするんですか?!」
「何のこと?」
「あー!絶対、確信してますよね?!」
「知らないよ」
「とにかく、そんなゲーム止めて下さい!」
私が恭ちゃん先輩を睨んでそうせがむと、しばし沈黙の時間が流れる。すると恭ちゃん先輩は私から視線を外して果物を指差した。
「…そこの果物むいてくれる?」
「え?あ、はい。私も持ってきたんですけど…」
「いいよ。食べるから置いといて」
「じゃあ、切りますね!…って、はっ!つい、いつもの癖が!恭ちゃん先輩!話そらさないでください!」
「知らないよ。そもそも君には関係ないでしょ」
「あります!大ありです!好きな人が傷つけられるの見てるなんて嫌です!」
「…ほんと、腹が立つよね」
「え?」
「なんでもないよ。君、しつこそうだし、もうやめるよ」
「ありがとうございます!あ、ツナ!もう入ってきても大丈夫だよ?」
「え…。(いや、って…何気にめちゃくちゃ凄い?!)」
なんとか病室へ入れることになったが、恭ちゃん先輩の視線を気にしてなかなか入ろうとしないツナを私は無理矢理引き入れた。
「はい、ツナ!あーん!」
「い、いいよ!自分で食べるよ!」
「…」
「いいじゃない。入院してる時くらい」
「いや、本当にいいから!」
「じゃあ、私のお願い」
はい。といい私はツナの口に無理やり押し込んだ。
「むぐっ!」
「えへへー」
「(いやいや、やばいよ。雲雀さんがめちゃくちゃ睨んでるよ!)」
「あ、恭ちゃん先輩もします?」
「いらない」
「そう言わずに!」
私はまたツナにした時のように「はい!」と無理矢理、恭ちゃん先輩の口に果物を押し込んだ。
「ここの果物おいしいんですよ!さすが、恭ちゃん先輩のお見舞い品ですね!」
「…そう」
「あと、ぶどうに…あ、メロンもありますよ!」
「じゃあ、そこの持って帰っていいよ」
「え!いいんですか?!わーい!流石、恭ちゃん先輩!」
「だから個室用意させたから、さっさと出てって」
「え?」
果物を持たされた私とツナは、なぜか恭ちゃん先輩に追い出されてしまいました。
「でも、よかったね!ツナ!」
「ま、まぁね…」
本当に個室を用意してくれた恭ちゃん先輩。流石だと感心してしまう。
「私、あとでもう一回、恭ちゃん先輩のところに行ってくるよ」
「あ、あのさ!そのことなんだけど…」
「なに?」
「雲雀さんって、さ…」
「うん」
「に、優しい?」
ツナの言葉に思わずきょとんとしてしまったが、確かにツナに恭ちゃん先輩の話はちゃんとしたことがなかった気がする。
「ううん。後輩だからって容赦ないよ」
「そ、そう?」
「今日は多分、本調子じゃないからじゃないかな。普段はもっと怒るし、仕事とかありえないくらいさせるし…」
「(いや、前から気になってたんだけど…)」
「あ。でも、確かに優しいところはあるんだよ?分かりにくいから、誤解されやすいけど。先輩としては好きだもの。私」
「(雲雀さんって…。のこと、好きなんじゃ…)」
「ツナ?」
「え!あ、うん。そ、そっか。(…でもは気にしたことないみたいだし、俺の考えすぎ、かな?)」
「恭ちゃん先輩がどうかしたの?」
「ううん。話には聞いてたけどさ、と一緒にいる雲雀さん、見たことなかったからさ。っていうかのその呼び方。よく雲雀さん許したな」
「恭ちゃん先輩?かわいいでしょ。怒られたけど押し通したの」
「雲雀さんも苦労するなー…。聞いてるだけでらしくて光景が目に浮かぶよ」
「えへへ」
「恭ちゃん先輩から貰った果物、食べちゃおうよ」と言って私が籠からオレンジを取り出してツナに見せると、 先ほどまでなにかを考えているかの様なツナだったが、すぐにいつものツナの笑顔に戻った。