20話 可愛さ満点!星の王子様


「初めまして!姉!」
「えーっと…?」

いつものように学校帰りにツナの家に寄ってみると玄関で、大きな本を手にした男の子が出迎えてくれました。


「フゥ太君って言うんだね」
姉にも会いたかったから、ぼく待ってたんだよ!」
「え?私に?」
「ちょっ!フゥ太!」
「ツナ!」

玄関先で今、ツナの家でお世話になっているというフゥ太君と名乗った男の子と話していると、ツナは慌てたように階段から下りてきた。
一見、普通の可愛らしい男の子に見えるが、どうやらそうではないらしい。
フゥ太君が私の手を掴んでツナの家に上げようとしてくれているのを目にしたツナは、観念したように息をついた。

ツナの部屋に上がり、話を聞いてみると、どうやらフゥ太は星の王子様で、ランキングを作れば100%的中!ということで有名な子なのだとか。
でも、お得意のはずのランキングなのに、ツナのランキングだけが見事、外れてしまい…。

「懐かれちゃったんだね」
「ゴメン!!巻きこまないようにしてたつもりだったんだけど!」

フゥ太君は有名なだけに、変なマフィアにも狙われかねないということで、どうやら私とフゥ太君が接触しないようにツナはしてくれていたみたいだ。 こういうところ、ツナはやっぱり優しいと思う。

「今更だよ、ツナ。私なら大丈夫だから、安心して」
「お、お前はまたそんな根拠のないこと…」
「だって、ツナの力になりたいもの」
「うっ…。あ、ありがとう。

照れて言葉が詰まりながらも、そう言うツナに私は我慢できずに勢いよく抱きつく。

「ツナー!」
「な、なんで抱きついてくるんだよ!」
「ツナが可愛いのが悪いよ!」
「はぁ?!なに訳わかんないこと…」
姉!!」
「「っ!!」」

ツナといつもながらの会話をしていたところに、どこから見ていたのやら、フゥ太君がツナの言葉を遮るような大きな声が聞こえてきたことで、思わず私とツナは距離を取る。

「フ、フゥ太!お前、いつの間に…ランボ達と下でおやつ食べてたんじゃ…。」
姉が来てるのにそんなことしてられないよ!」
「わ、私?」

フゥ太君がずいっと私に詰め寄り、子犬のようなウルウルとした瞳で訴えかけてくる。

「僕、姉のランキングが欲しいんだ!ダメかな?」
「え、私の?別にいいよ」
「本当?!」
「ま、待った待った!!お前、そんなあっさり…!」
「だって、欲しいって言ってるし」
「だからって、ちょっとは躊躇しろよ!やり方も知らないくせに!」
「大丈夫だよ。ツナがいるもの」
「なっ!」

止めるツナをよそに、フゥ太君は既にノリノリで準備を進めているようだ。

「今なら雨も降ってないみたいだしね」
「雨?」

ツナに聞くとどうやら、フゥ太君は雨が嫌いでランキングがめちゃくちゃになるらしい。すると、突然フワッとツナの部屋の物が浮き始めた。

「こちらフゥ太、聞こえるよランキングの星…」
「きゃっ!」
「また部屋が!」
「スピー」

私達のことなどお構いなしにリボーン君は、気持ち良さそうにぷかぷかと浮きながら寝ていた。

姉の料理5万430人中211位、空手8万565人中305位…」

淡々と私のランキングを作り続けているようだ。なんだか少し恥ずかしいな…と思いながらもフゥ太君の方を見ていると、突如ピタリと重力が元に戻り、ツナの部屋の物がバタバタ!と下に落ちた。

「部屋がめちゃくちゃだよ!」
「片付けるの手伝うよ」

ツナと一緒に部屋を片付けていると、本のランキングを書き上げたらしいフゥ太君が私の元に駆け寄ってくる。

「やっぱり凄いよ!姉!断トツだよ!トップクラスだよ!」
「え!なにが?!」

興奮気味に、目をきらきらとさせているフゥ太君は、ギュっと私の手を掴む。

「滅多にいないよ!さすが姉だね!」
「?」

なにが凄いかよく分からないけど、どうやら星の王子様にとっては興味がそそられるランキングだったに違いない…。

「ありがとう!姉!」
「う、うん。どういたしまして…って、あっ!」

ふと、何気なくツナの部屋の時計を見る。と、もう夕方の時刻を指していた。そろそろ帰らないと、晩御飯の準備が間に合わなくなってしまう…。

「ツナ、ゴメン!もう帰らなきゃ!」
「またね!姉!」

私は、ツナとフゥ太君に手を振り、急いで部屋を出た。


「知ってた?ツナ兄」
「何が?」

一通り片付け終えた俺は、一息付こうと机においてあった缶ジュースを開けて口元にやる。

姉って、ぁあ見えて実は凄く男受けが良いんだよ。ランキングでも上位に来てる」
「ぶっ!ゲホッ!ゲホッ!…はぁ?!」

思いもしなかったフゥ太の言葉に思わず、飲んでいたジュースをのどに詰まらせ掛けた俺は、咳き込みながらも机に缶ジュースを置く。

「な、なんの話だよ!」
「ツナ兄、知らないかと思って!あ。でも、ツナ兄に本当に聞いて欲しいのはそういう話じゃないんだ。姉の体に…」
「あ、ツナ!言い忘れてたけど、明日の宿題…」
「んなぁああ!」
「え?」

突然戻ってきたの声で我に返った俺は、 フゥ太からなにか聞いてはいけないものを聞いてしまっている気がして慌ててフゥ太の口をふさぐ。

「んんんー!ツナ兄、くるしいよ!」
「ご、ごめん!フゥ太!」
「なにしてるの?」
「な、なんでもないよ!」

だけど俺がこの時…ちゃんとフゥ太の言葉を聞いておけばよかったということに気づくのはもう少し、後の話だ。