21話 ご機嫌ななめ?お花見合戦!
雪合戦、山本のバットに道場破り…あまつさえ、花ちゃんの初恋の話ですか?!
「いいご身分で…」
「なにそんなに怒ってんだよ」
「別にー」
「俺、ちゃんとに報告してるだろー!」
「してくれなきゃ、ツナと口聞かない」
「んなっ!」
「…」
別に、ツナの話を聞いて怒ってるわけじゃない。
ただ最近になって私の知らないツナが増えてるようでなんだか怖い。
それに、いつかこんな話もしてくれなくなる日が来るんじゃないかって…。ただ、それが怖くてたまらないんだ。
「それで?後は動物園だったっけ?」
「そ、その時はも一緒に居ただろ?!」
「ツナがライオン倒した後ね」
「なんか、すっげー棘がある言い方なんだけど…」
まぁ、ぶっちゃけた話をすると、動物園に行く件は、私がリボーン君にツナと一緒に行くのを断ったんだけど…。
京子ちゃんと一緒だって聞いたから、ツナに気をつかったつもりだ。
本当は心配で心配でたまらなかった。実際、結果論だけど…。やりすぎたかなぁ。なんて、思ってしまうとどうしても棘がある言い方にもなるわけで。
完全に私のわがままだ…。京子ちゃんがツナを好きになったら、絶望的なのは目に見えてるのに…。
「もうやだー!」
「ぇえ?!」
考えれば考えるほど負のスパイラルにハマってしまう。気がついたら子供みたいに泣いてた。
「女の子を泣かすなんて最低よ」
ガシッ!
「いてっ!!」
「…リボーンくん?」
リボーン君が冗談めかして、女子高生のような口調でそう言い、ツナに蹴りをくらわせた。 机に飛び乗ると、私の目の前に来たリボーン君が泣いている私の頬に小さな手を触れさせる。
「泣くな。」
「…う、ん」
「ツナには後で俺がみっちり言っておいてやるからな」
「はぁ?!」
「リボーン君…ありがとう」
なぐさめようとしてくれてるのかな?
リボーン君は、赤ちゃんなのに、私の方がいつも迷惑かけちゃっている気がする…。
「ツナ」
ツナの名前を呼ぶとそれ以外は何も言わずにリボーン君はまっすぐにツナのことを見ている。
「ぐっ!…わ、分かってるよ!」
「?」
「後でまた来るからゆっくりしていけよ。」
「うん。ありがとう」
泣きやんだ私が部屋を出て行くリボーン君に手を振って見送ると、ツナがなにかを言いたそうな表情で私を見ている。
「あの…?」
「…なに?」
「お、お花見でも行こうか?」
「…」
「…」
暫くお互いに沈黙も時間が流れる。私はまっすぐにツナを見る。
揺れる瞳が不安げで、私の言葉を待っている。そう言ってくれたのもツナの優しさだということがよく分かる。
「ツナ」
「な、なんだよ」
「行くー!!」
「わっ!」
ツナに正面から抱きつき、ツナの腰に手を回す。
「ツナに誘われていかない理由がないもんね!」
「(よ、よかったー!の機嫌が直って!)」
ツナは、安心したようにほっと胸を撫で下ろした。
そして翌日…
「お花見、お花見~」
「確かに言い出したのは俺だけどさ…。なんでこんなことに…」
「そう言うなよ、ツナ。いい花見になりそーじゃねーか」
「まだ早朝ですし、最高の場所をゲットできますよ!」
足取りが軽い私や獄寺、武とは打って変わって足取りが重いツナと一緒に花見の場所取りへと向かう。
「何で俺が…」
「仕方ないよー。死人を出すわけにはいかないもん」
花見の場所取り取り如きで、ビアンキさんのポイズンクッキングを見ず知らずの人に喰らわせるわけにもいかないのだから仕方がない。
「わぁー!きれー!」
「ラッキー!」
まだ誰もいない公園。満開の桜がとてもきれいだ。 しかし私達が綺麗な桜を眺めている最中、背後から声が掛けられる。
「出てけ。花見場所は全て占領済みだ」
リーゼントに学ランを着た男の人が私達を睨みつけ、帰らせようとする。 しかし、あれ?この人、どこかで…。と私が考えているなかで、手の早い獄寺が前に出る。
「出てかねーとしばくぞ」
「うるせー!」
ドガッ!
「あっ」
獄寺のやつ、一発でのしちゃってるよ…。 けたたましい音をたてて倒れてしまったリーゼントの人を見て私とツナは思わず顔を見合わせる。
「あちゃー」
「どうする?ツナ」
「いや、どうするっていわれても…」
うーん…とこの現状をどうしたものか悩んでいると、今度は聞きなれた声に私は思わず肩を震わせた。
「、なにやってるの?」
「え…恭ちゃん先輩?!」
あれ?恭ちゃん先輩がここに居るということはー…ちらりと私は倒れたリーゼントの男を見る。
「あ!この人、風紀委員だったんだ!見覚えがあるなぁって思ってたんだよねー」
「気づくの遅いよ!!」
「あ、あはは…。ごめん」
私がツナとそんな会話を交わしていると、恭ちゃん先輩が息を吐くいた。
「まぁ、いいよ。呼び出す羽目が省けたから」
「え?」
「後で君を呼び出すつもりだったからね」
「私をですか?」
「い…委員長」
「君は役にたたないね」
リーゼントの男が縋るように恭ちゃん先輩の足元に近づくと、恭ちゃん先輩は冷たい視線を彼に向ける。
「!」
「ひっ!」
ビュ!と恭ちゃん先輩が風紀委員の人をトンファーで殴りつけようとしたその時、思わず私は声をあげる。
「きょ、恭ちゃん先輩!!」
私の言葉でピタリと恭ちゃん先輩の動きが止まる。恭ちゃん先輩は息を吐いて私の方を見た。
「…なに?」
「あの、恭ちゃん先輩!今回は…。ほ、ほら、お花綺麗ですよ!」
「…本当甘いね。君は」
どうやら私が恭ちゃん先輩と会話をしている隙をついてリーゼントの男はその場から逃げだしたらしい。私が胸を撫で下ろすと、恭ちゃん先輩は不機嫌そうに私を睨む。
「のせいだよ」
「今度、書類2倍やりまーす!」
「…」
恭ちゃん先輩は呆れたような顔で私の方を見た。すると、何処からともなくまたしても私達の元に足音が近づいてくる。
「おー!ちゃん!」
「あ、シャマル先生!」
どこからともなくお酒を持って酔いまくっているシャマル先生が現れた。
「俺が呼んだんだぞ」
「リボーン!」
「赤ん坊、会えて嬉しいよ」
「ヒバリ、俺達も花見がしてーんだ。そこで、ツナが花見の場所をかけて勝負がしたいそうだぞ」
「んな!誰も言ってないよ!そんなこと!」
「ゲームかい?いいよ。」
そういうと恭ちゃん先輩はちらりと私をみる。
「?」
「君達3人とそれぞれサシで勝負しよう」
再びツナ達の方を見て恭ちゃん先輩はそう言うと、ゲームのルールについて話を始めた。
「お互い膝をついたら負けだよ」
「3人?ってことは、私は?」
「俺はやるつもりないし、にやらせるつもりもないよ」
「いや、10代目。やりましょう!」
「え?!」
「一応ルールあるし、花見してーしな」
武や獄寺に説得されたツナはしぶしぶながらもゲームに挑戦することになる。
「、今すぐそこから離れた方がいいよ」
「…はーい」
ツナにも恭ちゃんにそう言われた私は、仕方なしにリボーン君の近くへと避難する。
「心配すんな。その為に医者も呼んである」
「あの人、女しか診ないんだろ?!」
「お前姉ちゃんいる?」
ズイっと恭ちゃん先輩に近寄ったシャマル先生。
「あ、シャマル先生」
バキッ!
「消えろ」
「のへー!!」
「危ないです…って言おうとしたのに…」
「(医者いなくなったー!!)」
そんなわけでシャマル先生が恭ちゃん先輩に一撃で伸されてしまったのもお構いなしに、ゲームが始まったんだけど…
獄寺の新技のボムスプレッズも、武のバットも恭ちゃん先輩の仕込み鉤の前に、あっけなく倒されてしまった。
ドザ!
「山本!」
「大丈夫?!」
「ぁあ。ツナ!頑張れよ!」
「ぇえー!」
無理だよ!と言いながらも、リボーン君に死ぬ気弾を撃たれると…
「復活!死ぬ気でヒバリを倒す!」
カッコいいんだよね。これが…。ただ死ぬ気モードでは恭ちゃん先輩と互角のようだけど…。
「ツナ!」
「わっ!ちょっ!」
ツナの額の炎が消えてしまったら、ツナに為す術はない。
「ひぃい!」
「ツナ!」
恭ちゃん先輩が振りかかり、思わず、私がツナに掛け寄ろうとしたものの、リボーン君から「待て」という言葉が発せられ私の体が一時停止する。
「え?」
「うそぉ?!!」
その瞬間にも、膝をついていたのは恭ちゃん先輩の方だった…。
「恭ちゃん先輩?!」
「奴の仕業だぞ」
「おーいてぇ」
リボーン君曰く、シャマル先生は殴られた瞬間にトライデント・モスキートを発動させたらしい。その早技はやっぱりさすがだ…。
「すごーい!」
「ちなみにこいつにかけたのは“桜クラ病”つってな」
「サクラ、クラ病?」
「桜に囲まれると立っていられなくなる」
その言葉通り、よろけながらもと恭ちゃん先輩はゆっくりと立ち上がる。
「約束は約束だ。せいぜい桜を楽しむがいいさ」
「あっ!雲雀さん!」
「恭ちゃん先輩!」
恭ちゃん先輩は桜クラ病にかかったまま公園から立ち去ろうと私達に背を向けた。
「あとで君を呼び出すつもりだったからね」
心配になりつつも私は、ふと恭ちゃん先輩の言葉を思い出す。
「わ、私、ちょっと見て来る!」
「え!あっ!!」
「え?」
急いで恭ちゃん先輩に掛け寄ろうとした私だったが、ツナに力強く手を掴まれる。
「あのっ!電話すれば、さ…。それに今はあんまり煩くしない方がよさそうだし…」
「でも…!」
「だ、大丈夫だよ!雲雀さんなら!(なに言ってんだ…俺…。でも…なんでだろう…。行かせちゃ、いけない気がする…。)」
「そ、そうかな…」
「…」
真っ直ぐに私を見てそういうツナに、なぜか妙に納得してしまった…。そんな時、雰囲気を一転させるような明るい声が響き渡る。
「ツナさーん!」
「!!」
「ハルちゃん!京子ちゃん!」
「わー!綺麗な桜だねー!」
「満開だね!ツナ兄!」
「ところで…どうして、ツナさんとちゃんは手を繋いでいるんですか?」
「え…あっ!」
ハルちゃんの言葉で、何故か驚いたようにツナが私から手を離す。
「ツナが握ったのにその反応酷い!」
「いやっ!あの!」
「仲いいんだね」
「ち、違うんだよ!京子ちゃん!そんなんじゃ!」
「っー!ツナ!!」
なにはともあれ、とっても楽しいお花見になりました。