22話 その名は内藤ロンシャン


「沢田ちゃん!ちゃん!獄ちゃーん!」

皆さん、春です!
私達は、みんな無事に2年生に進級しました。
クラス替えは凄く不安だったけど、去年と殆ど変わらないメンバーでやっていけそうです。
勿論、ツナとも同じでほっとしてます。恭ちゃん先輩率いる風紀委員も、今年も変わらずのようです。
恭ちゃん先輩曰く、「僕はいつでも自分の好きな学年だよ」って言ってましたけど…あの人、年齢詐称してるんじゃないの?!なんて思わないでもないけど、そんなことを言ったら噛み殺されるので言いません。

「てめー!誰が獄ちゃんだ!!」
「わわっ!獄ちゃん、ストレスたまってんだよ!」

そして、この明るい口調で私達に話しかけてきた彼の名は内藤ロンシャン。
今、私達と同じクラスでトマゾファミリーの8代目ボスらしいです。
でも、はっきり言って、ロンシャンはわけが分からない。
この前だって、いろいろあって家が全焼しちゃってツナの家に泊まっていたらしいんだけど私には、未だに謎です。
それにしても…なんだか今日、私はずっといまいちテンションが上がらない…。

「ボウリングでスッキリしよっ!」
「はぁ?」
「男3人集めてるのよ!むこーも可愛い女の子来ちゃうからさ!」
「女の子?!」
「…こほっ、こほっ」
「出会いだよ!出会い!」

力説するロンシャンの話を聞き流しつつも私は、小さく咳き込みながらツナの袖を指で握る。

「(?)…うーん。俺はパスかな」
「一人で行ってろ」
「たのむよ~!二人とも!」
「やってやればいいだろ?」
「リボーン!!」
「…」

なんだか、頭がぼーっとする。リボーン君がまた物騒にマフィアがどうの…とか言ってるのは聞こえているけれども内容が頭に入ってこない…。

「ん…」

さっきから喉が痛くて咳も止まらないや…。風邪、かなぁ…。

「行きましょう!10代目!!」
「ぇえ!!」
「皆でボーリング、いくの?私は帰るね…」
?!」

静かにツナの袖から手を離し、ふらりとその場を後にした。
ダルイ…とてつもなく、足が重い。家は、もう目の前なのに遠く感じる。

「…最悪」

はぁ…と2、3歩ゆっくり足を進めたその時、ぐらりと私の体が揺れる。

「っ!」

トスン

体が倒れり、目の前が真っ暗になったはずなのに、未だに痛みを感じず私はゆっくりと目を開ける。

「…へ?」
「お前、無茶しすぎだぞ」
「え…ツナ?!」

何故か、ロンシャン達とボーリングに行ったはずのツナに私は体を支えられていた。

「な、なんで?」
「心配だったから」
「え。そんなに分かった?」
「うん。、朝から顔赤かったしね…よっ、と」
「うぇ!!」

体を支えられながら私は、ツナにすっと体を持ち上げられる。

「ちょっ!ツナ!」
「暴れないでよ!落としちゃうから!」
「で、でも!…っ!」

コホッコホッと出る咳にツナは呆れたように息を吐く。

「ほらみろ。無茶するから」
「うう…」

こんな時に、不覚ながらもまたツナにときめいてしまう自分がいる。ツナに抱えられた私は、ぎゅっとツナの上着を掴んだ。


「はい、薬」
「…ありがと」

ツナに家まで送って貰った上に、ここまで面倒みてもらうなんて…凄く嬉しい反面、なんだか凄く恥ずかしい…。

「ゴメンね。ツナ…」
「いいよ、ただの風邪みたいだし。家にシャマルが居てくれてラッキーだったよ」
「ツナ…ボーリングは…」
「行かないよ!ま、本当はボーリング場の目の前まで行ったんだけど」
「そうなの?」
「うん。でも、のこと心配だったしさ」

そんなに距離なかったけど、走ってきたから疲れたー。と付け足してツナは、私の部屋で足を伸ばす。

「ありがとう、ツナ」

私が可笑しそうに小さく笑ってそういうと、ツナは照れながらも私の頭に手をおいた。

「早く、元気になってよ」
「もちろん!ツナのお望みとあらば!」
「なんだよそれ」

たまには、風邪を引くのも良いかな…。