23話 病み上がりの豪華客船
「わぁー!豪華客船だぁ!!」
「!お前、風邪治ったばっかりなんだから大人しくしてろよ!」
「大丈夫だよ!」
先日はどうやら風邪をひいてしまったらしく、再びツナに迷惑をかけてしまったです。
そして今回は、奈々さんが懸賞で当てた豪華客船の旅が始まろうとしています。
大きい船、設備のよさ。その全てがキラキラして見えます!でも…
「本当に私も来てよかったの?」
「母さんはその気だったし、リボーンだって行けって言うんだから、別に…」
「そうじゃなくて!ツナだよ!私なんかが行くんなら、京子ちゃん誘ってあげたのに。ってこと」
「い、いいよ!別に!」
「嘘!ツナ、一緒に行きたかったくせに!」
「そんなことは…まぁ、ちょっとあるけど」
「勿体ないことしちゃったねー、ツナ」
「いや、そうは思ってないよ!」
「ホントにー?」
私はちょっと嫌味をこめてツナに詰め寄った。
「ほ、本当だよ!と来れてよかったよ!うん!」
「…絶対嘘だ」
「本当だって!」
「ツッくーん、ちゃーん!ご飯食べに行きましょうー」
「あ、はーい!いこ!ツナ!」
「ちょっ!!」
ニコニコ笑う奈々さんの声で私はツナの手を引き、食堂へと向かう。 豪華客船の食事は一体どんなんだろ?とわくわくしてたんだけど…。
「なにこれー!?」
「あちゃー、全部ないね」
机の上にあった豪華な食事は見事に全部無くなり、空のお皿だけが机の上に乗っていた。
「…ん?ツナ!」
「え?なに…って!?」
「ランボ君!」
「もー、いらない」
「食い倒れて、寝てるー!?」
「あらあら!ランボ君、どーしたの?」
そう言って奈々さんが満腹になったランボ君を抱きかかえた。どうやら私達の料理を全部食べてしまった犯人はランボ君だったようだ。
「…ん」
「あら」
奈々さんは、ランボ君にガシッと服を掴まれた。
「ママンがいないって言ったら泣き出して」
「って!ビアンキまで?!」
「あ。イーピンちゃんも!」
「ぇえー!ってことは…」
「ルネッサンス」
「リボーン君!可愛い!」
「服着ろ!!」
またもや、可愛いコスプレで私達の前に登場したリボーン君。だけど、ガードマンの人達がどうやら、探しているらしい。不法侵入だから、当たり前なんだけど…。
「どうしよう?!」
「俺達はヒットマンだ」
「…ってことは?」
「ガードマンを消す!」
「それまちがってるー!!」
ツナの声など聞かず、リボーン君達はそれぞれ4方向に別れて走り去って行ってしまった。
「あーもう!」
頭を抱えたツナだったが、そうもしてはいられず…。 私とツナは急いでリボーン君達を追いかけることになった。
「ツナ!ランボ君がいた!」
「えっ?!」
「うっ…吐きそ」
満腹の状態で走っていたランボ君が気持ち悪そうに、廊下で口元を押さえてうずくまっていた。
「アホー!!」
「ツナ、私がランボ君連れてくよ!」
「ありがとう!!」
私がランボ君を抱きかかえて部屋に向かった一方で、ツナはリボーン君達を探すために豪華客船を走り回っていた。
「ツナ…大丈夫かな?」
不安になりながらもやっとの思いで私は、ランボ君をベッドに寝かしつけることに成功した私は少し肩の荷が下りたせいか眠気が襲ってきた。
「ん…」
「!」
「…んん」
「ってば!」
「…ツナ?」
目が覚めたら、リボーン君達を探し回っていたはずのツナが目の前には私の肩をゆすっていた。
「あれ?…あっ!リボーン君達は?!」
「そ、それがさ…」
「?」
どうやら、ガードマンの人達はリボーン君達を探していたわけではなかったらしい。
それにどうやら私達が今から行くのはただの遊園地でも旅行でもなく。「マフィアランド」。
全てはリボーン君が仕組んだことらしい。それに、この船に乗り合わせていたのは私達だけではなかったという。
「えっ!ロンシャン君も?!」
「うん。また新しい彼女連れてたよ」
「…個性的な?」
「ま、まぁ…。あ。でも!遊園地は凄い綺麗だよ!」
「本当?!」
「うん。もう少しで着くみたい」
「そっか!…ゴメンね。ツナ」
「え!なにが?!」
「ううん。なんでもない!」
「変な奴」
やっぱり、京子ちゃんを誘ってあげればよかったかな?と思ってしまったのはツナには内緒だ。
だけど、もう少しでこの船旅も終わりを迎えそうかな…と思ったその矢先、ズキン!と軽く私の頭に衝撃が走った。
「っ!」
「!?」
私が思わず頭を押さえていると、ツナが心配そうに私を覗き込む。
「頭痛いの?!」
「う、ううん!大丈夫!ちょっと船で疲れただけだから」
「無理してない?」
「平気だよ」
「…ちょっと待って」
「え?」
ツナは立ち上がり、ごそごそと鞄を探りだす。
「ツナ?」
「これ」
私は、ツナに薬2錠を手渡された。
「え。なんで…」
「シャマルが、病み上がりだから気を付けるようにって言ってたからさ。薬貰っといたんだ。に渡してもどうせ飲まないだろ」
「あはは…」
流石ツナ。幼馴染だけあって大当りだ。
「大人しくしてないからだぞ」
「そんな、子供みたいに…」
「心配だから言ってるの!着くまでそれ飲んで寝てろ」
「えー!せっかくツナと一緒に居るのに?!」
「なに訳わかんないこといってんだよ!いいから大人しくしてろよ!」
しぶしぶながらも私はツナに渡されたお薬を飲んで、部屋のベッドで横になる。
ツナの恋を応援したい。だけどごめんね。ツナ…。やっぱり私はツナが好きだから…。
「ツナ」
「なに?」
「遊園地、楽しみだね!」
「え、あーうん。ま、リボーンが連れていくところだからあんまり期待できないけど」
そういうツナに私が手を伸ばすと、戸惑いながらもツナは私の手を握る。
「さすがツナ」
「…すっげー昔のこと思い出して、咄嗟に手出しちゃったよ」
「あはは、幼稚園の時だ」
「そう。あの時、俺、が出した手握らなかったから怒られたなーって」
「今は怒らないよ」
幼稚園の頃、手を握ってくれなきゃやだ。って何度かツナに我儘を言った気もする。
今思えば凄く恥ずかしいけど、覚えてくれてたんだ…。
あの頃みたいに、真っ直ぐに自分の感情をぶつけることは、もう出来ないから。
私が差し出した手をツナが握らなくても、怒ることなんてない。そんな資格なんて、私にはないんだ。
だから、もう少し。もう少しだけでいい…。この特権を利用させてほしい。まだ私は、ツナを好きでいたいから…。
私は、手からツナの温もりを感じながらそっと目を閉じた。