25話 小さな獄寺君?
「へー。そうなんだ」
私は、先日行われたリボーン君とビアンキさんの結婚式の話を武から聞いていた。 ビアンキさんが触れたものは、全てポイズンクッキングになるという究極料理の技、千紫毒万紅が完成したらしい。まぁ、これはツナから聞いたことなんだけどね。
「片付けんの大変だったけど、面白かったぜ」
「リボーン君に聞いたらそんなの知らないから行くな。っていわれたんだもん」
「ハハハ!やるなー、小僧の奴!」
「あ!ツナの家見えたよ!」
「お、今日も騒がしそうだな」
小学校の時の夢について調べるという宿題がでた私達。 私と武は同じ班になったので、京子ちゃんと一緒の班になったツナを他の同じ班の友達に言われて偵察にきたのだ。
「(まぁ、私も気になっていたから武が話を振ってくれて丁度よかった…)」
「なぁー、の小学校の時の夢ってなんだったんだ?」
「私?私はねー…」
「ん?」
「…なんだったかな?」
「なんだそりゃ」
「あはは、忘れちゃった」
「じゃあ、早く思いださねーとな」
「そだね」
嘘だ…。私の夢はずっと一緒だ。小さいころから今でも変わっていない。
「(本当に忘れられたらいいのにな…)」
だけど私の夢が叶う日がこなくても、私はきっと後悔はしない…。
「ツナー!入るよ!」
「宿題すすんでっか?」
私は、いつもツナの家に入るのと変らずにツナの家に入り、声のするほうへと向かった。
「山本!!」
「同じ班の連中がツナの班偵察してこいってさー」
「ツナ、部屋は?」
どうしてリビングでしてるんだろう?珍しいね。と私が尋ねるとツナは言いづらそうに眼を逸らした。
「あーいや、ちょっと俺の部屋はたてこんでるっていうか…」
「たてこんでる?」
私が首を傾げると、ツナがたてこんでいると言った通り上から大きな物音が聞こえてきたと思うと、勢いよくドアが開いた。
「そんな暇あったら、外の敵でも倒してこい!」
「何だ獄寺!きてたのか」
「…え?!」
いや、武…。これは、獄寺なの?!
思わず私が目をぱちくりとさせて、獄寺に似ている小さな男の子を見ているとツナが慌ててその男の子を隠すように私達の前に立つ。
「ち、違うよ!獄寺君のいとこだよ!」
ツナは私達に小さな声でそう言った。
へー、いとこってこんなに似るんだ。喋り方も髪形もそっくり!でも、とても小さくて、ほっぺがぷにぷにしている。
「可愛いー!!」
そう言って、私がその彼を抱き上げると、何故かツナが青い表情をしている。
「ばっ!馬鹿か!てめぇ!」
小さな彼も顔を真っ赤にしながら、私の手から逃げよう暴れている。
「、ちょっとそれは…」
「どうして?あっ!そんなに暴れたら、落ちちゃうよ!」
「離せってんだ!」
「ハハハ!、貸してみろよ」
「う、うん」
なかなか大人しくしてくれない彼を武に手渡す。
「てめぇら…!ぶっ殺すぞ!」
「あららのら?どこのチビ助かしら?」
ひょっこり出てきたランボ君が興味津津に小さな彼を見ている。
「ランボ君!」
「コラ!でてくんなって言っただろ!?」
そんな中、武がそっとその彼をおろした。 すると、ランボ君が私達の足元にいる小さな彼に近寄ってくる。
「ガツンといっちゃうよ?」
ランボ君が殴る体勢にはいったその瞬間…。
「つきあってるヒマは、ねぇんだよ!」
ドカッ!
「ら、ランボ君!?」
「うわぁあああん!」
私達が止める間もなく、ランボ君は小さな彼に思いっきり殴られ、泣き出してしまった。
「コラ、チビ!獄寺みてーになっちまうぞ」
そういって武はその彼が手に持って出していたダイナマイトを取り上げた。
「なにしやがる!てめーら、あいつがみえねーのか?!」
「あいつら?」
「獄寺君、また変なこと言い出した!」
「え?獄寺?」
「え、あー…いや…。あ、あとで話すよ」
「うん?」
私がツナと会話をしていると、「ちぢんでるー!!!」という大きな声が響き渡ってきた。そして一方でツナはなぜか衝撃を受けている。
「なにがどうなってるの?」
「おもしろい子だねー!」
「京子ちゃん!どう?宿題」
「うん。順調だよ」
「そっかー」
私が京子ちゃんと二人で喋っているのを余所に、小さな彼が獄寺の武器に似たダイナマイトを放つと、パァン!!という音を立て、中から紙吹雪が現れた。
「わぁ!鳩だ!」
「凄い!面白いねー!」
私たちは感心しながらその子を見ていた。
「山本!はなせ!やつらがそこに!」
しかし、どうもその子がなにかを訴えているように感じ、私は小さな彼に目線を合わせる。
「ねぇ、なにかあるの?」
「!」
するとその子は、何かを思いついたように私の方をみた。
「どうかした?」
「おい!お前、向こう立て!」
「え?私?!」
「いいから、向こうに立ちがやがれ!」
「なにするの?」
とりあえず、私は言われた通りツナの隣の方に立った。その様子を確認すると、小さな彼は武に目線を移す。
「山本!ボールは持ってるよな?」
「ん?ああ。」
「キャッチボールしやがれ!」
「おっ!いいぜ!どこでやるんだ?」
「ここだ!」
「…え」
そして、その子が指を指したのは私がいる方向だ。
「もやんのか?」
「え?えー!!」
武はすでに投げる体勢に入っている。
「いけ!山本!」
「オーライ!」
武の目つきが変わり、もう逃げられない!と私は悟る。
「え、ちょっとまって…!」
「!」
べキッ!!
「…は?」
「へ?」
球は、なぜか私とツナのちょうど真横で、何も無いところで変な音をたてて停止した。
ドサッ!
「なっ!」
「んなー!!」
空中に浮いている球がポロリと床に落ちると、突如、変な緑の服を来た変な男の人が一人落ちてきた。
「次はこっちだ!」
「え?ああ…」
その子は、次に自分の方へと投げるように武に言う。
「ジャンピングキャッチだ!」
「んっ!」
武がまたもや思いっきりなげると同じような音をたてて、また一人。さっきと同じ格好のした男の人が落ちてきた。
「よっしゃあ!」
「どなたー?!!」
なぜか変な格好の人達は焦ったように自分の体を見渡した。
「お前ら、電柱にへばりついていた奴だな」
「リボーン君!」
「チビには見えるみてーだぞ」
光学迷彩やらボスやら…。そこから先は、リボーン君がなにを言っているのだか私には理解できないまま話は進んでいったが、一番分からないのは、突然リボーン君と共に出てきて当たり前のように喋っているこの変な機械に乗った男の人だ。
「だれ?」
「わぁ!おもしろーい!」
ツナはジャンニー二と呼んでいた。だけど、そんなことを言っている暇はなく、さっきの人達は銃をツナに突きつけてきた。
「ひぃい!」
「ツナ!」
とっさに体が動いた私は、銃をつきつけていた二人の足を払う。
バシッ!
ズガン!!
二人が倒れこむと同時に、リボーン君が手に持っていた死ぬ気弾がオートでツナに反応して額に直撃する。
「死ぬ気で敵を倒す!!」
「オートなの?」
「ジャンニー二に武器を改造されちまったからな。ツナの死ぬ気に反応したみてぇだな」
私たちがリボーン君とこんな会話をしているうちにも、ツナは見事に敵を倒していく。
「まいったか!!」
「ヴェルデによろしくな」
ヴェルデっていうのは、アルコバレーノの一人で緑のおしゃぶりを持つ子なんだって。この前会ったコロネロ君達と一緒なのかな?
「ツナかっこいい!」
「ドロボー退治しやがった!」
「すごいよ!ツナ君!」
「いや…今日のは俺じゃなくて」
真ん中分けのちっちゃい子のおかげだよ。とツナは私達にそう言った。
「え?!この子、獄寺だったの?!」
「ジャンニー二とアホ牛め!!」
その後無事に宿題が終わり、私は再びツナの家へ来ていた。
ジャンニー二さんというさっきの人が武器を全部ダメにしちゃったところ、ランボ君の10年バズーカも可笑しくなっちゃったんだって。
「獄寺、不運だったね」
「不運で済む問題じゃねーんだよ!」
「いいじゃん!こっちの方が可愛いし」
私は再び小さくなった獄寺を膝の上に抱きかかえた。
「てめー…!おい!!」
「あ!」
「ぁあ?」
「獄寺、私の名前呼んだ!」
「あ…」
「そういえば…」
「初めてだよね?!」
「知るか!」
小さくなった獄寺は、私の腕を振り振りほどいてそのままツナの部屋を出て行ってしまった。
「変な獄寺」
「う~ん」
「なに?ツナ」
「いや…なんとなく今の獄寺君の気持ちが分かる気がして」
「えー」
「たぶん…」
「たぶん?」
「複雑、なんじゃないかな?」
「…なんで?」
いつもに抱きしめられているからこそ気持ちが分かるツナだった…。
「ツナー!」
「だから!それだって!!」
わたしの夢は、いつもツナの隣に居ること。ただ、それだけだ。