30話 襲撃!そして、消えちゃった?
「やばい!遅くなっちゃった!」
風紀委員のお仕事が長引き、そのまま買い物をすませてから帰ろうとしたら、もうすっかり空が暗くなってしまっていた。 はっきり言おう。私は、暗いところが大嫌いだ。陽が落ちてしまい、辺りの商店街が不気味に見えてしまう。
「う…」
この前、皆でやった墓場での肝だめしでさえ怖いから武とずっと一緒に居させて貰っていたレベルの私にとって、 一人で誰もいない真っ暗の商店街を歩くことほど苦痛なものはない。
「早く帰ろう…」
そう思い、私は歩くスピードを速める。
ドス!
バキッ!
「なんの音だろう…?」
突如、嫌な鈍い音が耳に響いてきた。恐る恐るながらも、帰るために私は一歩一歩足を進める。
「恨まないでねー上の命令だから」
「ぎゃあああああ!!!」
「?!!」
嫌な音が止んだと思うと、前方から聞こえてくる男の人の悲鳴。
「な…に?誰か、いるのかな…?」
はじめこそ暗くてよく見えなかったが、どうやら私は気がつけば、その現場に10mもない距離に来てしまっていたようだ。 不可抗力ながらも私は見てしまった…。 獣のような髪をした男の子がうちの風紀委員の紋章をつけてた人の歯を抜こうとしている場面を。そして、それを何事もないかのように見るメガネと帽子を着けた男の子の姿を…。
「な、何やってるの!あんた達!」
「んぁ?」
「…」
って、私こそ何やってんだ!つい、反射的に声だして!絶対ヤバそうな人たちなのに…! でも…どうみても倒れている人は怪我してるみたいだし…。助けなきゃ…。
「犬…見られたみたいだよ」
「女が当たりなわけないびょん」
犬。と呼ばれていた少年は私の方をじっとみた。
「威勢はいいけど。一応確認。ランキングには入ってないよね?」
「(…ランキング?)」
「ま、どっちにしろ殺しちゃえば問題ないんじゃねー」
いやいや!あるだろ!大事件だよ!それは! でも、殺しなんて、普通の人から出る簡単な言葉じゃない。っていうことは…。
「あなた達、殺し屋さん?それとも、どこかのマフィアさんとか?」
「「!!」」
「え?」
二人は私の言葉に驚いたように私の方を見た。
「柿ピー、どうする?」
「…吐いてもらう」
「え」
“犬”という子と一方で、“柿ピー”と呼ばれていた男の子は、なにかヨーヨーみたいなものを構え、私に詰め寄ってくる。
「な!なに…?!」
「黒曜中2年、柿本千種」
「城島犬…お前、何者ら?どこのマフィアら」
「えっと…」
私は静かに拳を握り、右足を引き空手の構えの姿勢をとった。
「…」
ビュッ!!
「ッ!」
トントン!!
ダン!!
「あぶなっ!」
私は、なんとか避けたものの…。 何の前触れもなしに、千種と名乗る少年から針のようなものが飛び出してきた。私が避けた道にはたくさんの針が突き刺さっている。
「うひょー。結構、やるじゃん!」
「わー!わー!!」
こんどは犬と名乗る少年から、ビュ!と拳があがる。思わず私は急いでしゃがんで避けた。
「女の子相手に二人掛りはないんじゃないのー!」
「お前、それだけの強さでなんでランキングに載ってないびょん!」
犬と千種と呼ばれる男の子2人の攻撃を私は必死で避け続けながら返事をした。
「はぁ?!」
さっきから、ランキング、ランキングって…。
「フゥ太君じゃあるまいし!」
「「!!」」
「…あれ?」
怒涛のように続いていたはずの攻撃が突如止み、二人の動きもぴたりと止まると、また真っ直ぐに私の方を見ている。私、また変な事言った?!
「お前…」
「…犬。中止にするよ」
「ぁあ?」
「連れて帰る。めんどいけど…」
「はぁーーー…仕方ないびょん」
ヒュッ!
「え!!」
トン!
「っ!」
しまった。油断した…。私は、考えに集中してしまい、犬という子の瞬発的な動きについていけず鳩尾に一発くらい、そこで、意識を手放した。
「…」
「こいつ…まじで何者ら?」
暗闇から、二人の少年と少女の影が消えた。
「え??」
「そうなのよ。ちゃんのお母さんがね、昨日の夜から今朝にかけて家に電話してもちゃんが電話にでないって…」
「誰も出ないって…どういうこと?!」
朝起きると母さんから聞いた衝撃の話に、俺は思わず朝食を食べていた手が止まった。
「ほら、ちゃんのご両親今、出張中でちゃんが家で一人しょ。だからそれを聞いて心配になっちゃって。それで…」
「そ、それで?!」
「ちゃんのお母さんから合鍵を渡してもらってたから、さっき私もちゃんの家に行ってみたの。やっぱり誰もいなかったのよね」
「え…つまり、の奴…昨日、学校に行ったきり帰ってないってこと?!」
「ツナ、なにか知らない?お友達の家に泊まるとか言ってたとか…」
「き、聞いてないよ!そんなの!」
そうだ…思えば、朝から違和感があった。 時計がいつも通りにセットしていた時間に鳴った。いつもなら…が勝手に時間を早めて俺を起こすんだ。 いつも居るはずのがいなかった…。なんで俺、こんな大事なこと…!自分で自分の鈍さが嫌になった。
「あの事件に巻き込まれてるとかじゃないといいけど」
「あの事件?」
「この土日で風紀委員8人が重傷で発見されたんだぞ」
「え?!」
やられた奴はなぜか、歯が抜かれていたらしい。リボーン曰く、全部抜かれた奴もいるとか…。
「そんな…」
「やっぱり警察に相談した方がいいわよね…」
「け、警察?!…とりあえず、俺、学校いってのこと聞いてみるよ!京子ちゃんなら何か知ってるかもしれないし!」
「そうね。お願い、ツナ」
母さんは心配そうな表情で深く息を吐いた。
「ねー、ツナも護身用に格闘技ならったら?」
「なんでそうなるんだよ!」
「そりゃ心配だからよ!それに、男の子は強くなくちゃね!ちゃんを助けるためにも!」
「よけいなお世話だよ。やられてるのは、風紀委員だけ…って」
あれ…風紀委員って言えば…。
「…も風紀委員じゃん」
「ツー君?」
「…」
のことだから、大丈夫だろうなんていつもなら思うのに…。なぜか俺は、嫌な予感がして仕方が無かった。
「…どうした、ツナ」
「え!な、なにが?」
「すっげー変な顔してたぞ」
「な、なんでもないよ!」
「か?」
「!!」
不覚ながらも、リボーンにその名前を呼ばれて敏感に反応してしまった…。 俺は、母さんに無理やり手渡された護身術の宣伝チラシに目をやりながら学校に行く途中だった。だけど…。
「ずっと…嫌な予感がして」
「…」
「あ!風紀委員だ!」
校門の近くまでに来ると、あちらこちらに風紀委員の人達がいて、空気もどこかピリピリしていた。
「そりゃあ、あんな事件が多発してるんだ」
「やっぱり、不良同士の喧嘩かな?」
まさか、そこでが巻き込まれたんじゃ…。
「ちがうよ」
「雲雀さん!!」
「ちゃおっス」
「身に覚えのないイタズラだよ」
「え?」
雲雀さんは俺に殺気を放ちながら言った。
「勿論、ふりかかる火の粉は、元から絶つけど…」
「雲雀さん?」
さきほどまで怒りを抱えいてる雲雀さんとはまたどこか違った目をした雲雀さんを俺は見た。
「どういうこと?」
「はぃ?」
「が電話に出ないんだけど」
「え…」
「それに…」
雲雀さんは懐から携帯を取り出すと、俺に携帯電話の画面を見せた。
「これは…」
「?!」
雲雀さんの画面には、どこかの建物でが倒れて気を失っている写真だった。
「僕が電話を掛けた直後、の携帯から送られてきた」
「そんな…」
「ねぇ、君は一体どう思ってるの?」
「え…」
雲雀さんが俺にそう聞いた後、どこからかうちの学校の校歌が流れてきた。
ピッ
「なに?」
「(ヒバリさんの着うたー!?)」
「…」
「じゃ、じゃあ俺はこれで」
とにかく、今はここにいても邪魔になるだけだ。こっそり雲雀さんから離れようとしたその直後、雲雀さんは携帯の電話を切った。
「ねぇ…彼も君の知り合いじゃなかった?」
「は、はい?」
「笹川了平。やられたよ」
「っ!!」
それは、俺にとって最悪の知らせだった。