34話 出発の時


「あの…」
「笑ってください。
「骸君…」

目が離せなくて、骸君にそっと頬を触れられたその時…。

ガタン!

「っ!」
「ああ。千種ですか?」

骸君がドアが開く音の方を振り返った瞬間

ドサッ!

「千種君?!」

どうやら、大怪我をしているらしい。彼は、そのまま気を失い倒れ込んだ。

「おや。当たりが出ましたね」
「当たりって…」

私が千種君の怪我の状態を見ていると、嬉しそうに言う骸君の声

「千種きました?っひょー!だっせー!」

再び、部屋に来て茶化すようにいう犬君。

「ボンゴレについて何もつかまず千種が手ぶらで帰ってくるはずがない」

ボンゴレって…。まさか…。

「目を覚ますまで待ちましょう」

私は骸君の言葉にぞくりと体を震わせる。彼が…分からない…。


「俺には関係ねーよ!」
「獄寺をやった奴に、お前がボスだってバレてんだ」
「ひい!」
「奴らは直接、お前に狙いをつけてくるぞ」
「そんなこと言われたって…俺どーすりゃいいんだよ!!」
「奴らがお前を倒すためにやったことを忘れるな」
「!!」

思い浮かぶのは、俺を探すために傷ついた人達。 だって…。

「俺だって…奴らのやり方おかしいと思うよ」

9代目からきた、手紙だって…。なんだよ、これ…。

親愛なるボンゴレ10代目
君の成長ぶりはそこにいる家庭教師から聞いてるよ
さて、君も歴代ボスがしてきたように
次のステップを踏み出す時がきたようだ
君にボンゴレの最高責任者として指令を言い渡す


を…みんなまで巻き込んで…骸って奴むかつくよ」

12時間以内に六道骸以下
脱獄囚を捕獲
そして捕えられた人質を救出せよ
幸運を祈る 9代目


「だけど、あのヒバリさんだって帰ってきてないんだぞ」

いくら9代目からの指令だって言われても…。

「そんな奴らダメツナの俺に倒せっこないよ…ムチャだよ」
「だけど、まわりはそう思ってねーぞ」
「え?」
「俺も連れてってください!」
「獄寺君!?」
「今度は、メガネヤローの息の根をとめますんで!!」
「怪我は大丈夫なの?!」
「あんなのカスリキズですよ!」

そうは言うけど、全然大丈夫そうじゃない。きっとこうして立っているのもやっとなはずだ…。

「俺もいくぜ、ツナ」
「山本…」
「今回の黒曜中のことはチビに全部聞いた。…学校対抗のマフィアごっこだって?」

いや、それだまされてるよ!山本ー!!

「私も行くわ。隼人が心配だもの」
「ほげーー!!!」
「ビ、ビアンキ…」

でもそれ、獄寺君には逆効果なんだよなー…。

「よし。敵地にのりこむメンツはそろったな」
「ちょっ!うそ!待ってよ!!」
「守りから攻めに転じる時だ」

リボーンの奴!全然、俺の話聞いてねー!!

「やつらのアジトは新国道ができてさびれた旧国道の一角だと思われる。多分人質もそこにいるはずだ」
「あ…」

人質という言葉に思わず反応してしまう。

…」

無事なのかもわからない。俺なんかにできるとも思えない。でも…。

「ツナ。分かってんな」
「うん…俺なりにがんばるよ」

いつも傍で、応援してくれたのは…背中を押してくれてたのは、誰でもない。君なんだから…。



「千種君…」

千種君の手当てをしたが、やはり傷は多く、とても軽いとは言えなかった。それにやっぱり分からないのは、骸君だ。 いつも言葉は丁寧だが、どことなく闇を感じさせる。冷たくあんなことを言ってたけど、本当は千種君のことも私以上に心配なはずだ。

あれ?なんか…骸君て…。

「恭ちゃん先輩と似てる…?」

だから私は彼が気になるのだろうか。

「ツナが危ないかもしれないっていうのに…」

私、なにしてんだろう。どうして…。彼の言葉が…彼の仕草が優しくて…。

「どうしちゃったの…。私…」

自分で自分が分からなくなってくる…。