37話 最後の君の声


私は、ドキドキと胸を高鳴らせながら、携帯電話のアドレスに入っていたツナの電話番号に発信した。

「ツナ…」

久しぶりに聞けるかもしれない。大好きな人の声。ピッという音を立てて、携帯の音が鳴り響く。


「はぁ…はぁ~…」

俺がフゥ太を追って、一人で森の中まで入ってきたはいいが、結局見つからず、会えたのは黒曜中の人質と思われる人だった。 だけど、どうもヤバイ。という直感がそう告げ、思わず逃げてしまったが…良かったのだろうか? そんな先ほどのことを思いだしつつも、俺は皆のもとへ戻ろうと足を進めていた。

「皆、大丈夫かな?早く戻らないと…」

その時、ズボンのポケットに入れていた携帯が、ブーブーというバイブ音が鳴り響いているのに気付いた俺は一旦足を止める。

「あ、獄寺君かな?」

そう思い、携帯を開いてみると、そこには俺が全く思いもしなかった人物の名前が表示されていた。

「え!?!」

本当になのだろうか?それとも、骸達…?でも…少しでも、君の声が聞けるのなら…。

ピッ

「…もしもし?」

俺は、なんでもするよ。


『…もしもし?』
「!?」

うそ、繋がった…。ツナの声だ…。電話越しだが、ツナが無事であると分かっただけで、本当に嬉しくて…。涙が出そうになる。

「ツナ?」
『…?』
「うん…そうだよ」
『っ!今どこにいるんだよ!怪我してないのか?!』
「ご、ごめん。心配かけちゃって…ツナは大丈夫?」
『え。あ、俺は…うん。大丈夫』
「そっか…あのね!ツナ!聞いて!」
『な、なに?』
「私も大丈夫、だから」
『うん』
「心配しないで、大丈夫だから…」
『…うん』
「絶対に、無茶しちゃだめだよ」
『え?』
「私なら、なんとかなるから!ツナ達は今すぐここから…」

大好きな人が傷つくのは見たくないんだ…。

「逃げ…」
『今から行くから』
「…へっ?」

逃げて。という私の言葉を遮るように言われたツナの言葉が予想外で私は間抜けな声が出た。

『皆で、絶対にのことを迎えに行くから』
「ツナ…」

どうしてだろう。ほんの少しの時間しかたっていないはずなのに…。

『待ってて』
「っ!」

ツナの声が、すごく大人びて聞こえてしまったせいで私の胸が一気に熱くなる。

『返事は?』
「…はい。待ってます」
『うん。あ…』
「ツナ?」
『ゴメン!!また電話かけ直す!』
「え!?あ、うん!」

プツリという音を立てて、携帯から彼の声が消えた。私は、祈るように携帯を握りしめた。


「こらぁ!何やってんだ!」

林の隙間から山本達が誰かにやられているのを目にすると、 との電話を切り、とっさに俺は、なぜか普段ランボを怒るようにナチュラルに怒鳴っていた。

「(あれ…?なにやってんだ!俺!)」

そこには、先ほど写真で見た六道骸らしき男の人が立っていた。俺の方をじろりと睨みけ、俺に下りてくるように言う。

「いや…あの」

なかなか下りてこない俺にしびれを切らしたのか、彼はビアンキの方へと攻撃を向けた。

「ビアンキ!」
「死ぬ気になるのは、今しかねーぞ」

ズガン!!

「!ツナ?!」
「六道骸…死ぬ気でお前を倒す」
「最後の切り札だぞ。しっかり決着をつけてこい」

ニヒルな笑みで赤ん坊は笑いながらそう言った。

「アルコバレーノが0.05秒以下の早撃ちで撃ったのはおそらく特殊弾」
「しかし、最後の一発だったとは…。まんまと全ての術中に引っ掛かってくれましたね」
「それは、あの女のことを含めてですか?」
「ええ。これでまた一歩、ボンゴレ10代目の略奪に近づきましたよ」

森の陰からリボーン達の様子をこっそり見ていた骸は、不敵な笑みでそう言う。
パチンと骸が何かの合図を送るように指を弾く。千種は何かを考えるようにじっと骸の顔を見た。


「ツナ…」

切れた電話。あの様子だと、また何かツナの身に起こっているに違いない。

「でも…待ってるって言った」

ツナが迎えに来てくれると、そう言ったから…。

「待ってるからね…」

私は信じて待ってるよ。ツナ。

パチン!

「!」

頭の中で何かが弾けるのと同時に強烈な痛みが私を襲う。

「痛いっ…!」

再び襲ってきた今までで一番の頭痛が一気に広がりだす。 私は自分の意識が、ゆっくり遠のいていくのを感じた。
そう。どんなに私があなたを忘れてしまったとしても…。 きっとその言葉だけは忘れはしないだろう。