45話 ボンゴレリング


強大な力が手に入るボンゴレ正当後継者の証。それがボンゴレリングである。
そしてそのボンゴレリングを奪うべく、昨日の襲撃を仕掛けてきた銀髪の彼の名はスピルビ・スクアーロ。 ボンゴレで最強とうたわれている独立暗殺部隊ヴァリアーの一人だった。

「ヴァリアーは忠誠心が強くあらゆるミッションをこなしてきたが、あくまで闇の部隊だからな。表舞台にでてくることはなかったんだ。 だがある日をさかいにあの男が出現したときから…」

リボーンの言葉がツナの頭に木霊していた。


「あ。ツナ、おはよう。今日はえらく早いね。今から起こしに行こうと思ってたのに」

慌てるように家から飛び出してきたツナにはいつものように挨拶を交す。

!あ、実はさ…」
「よう。ツナ、今から学校か?」
「家光さん!お久しぶりです!」
「おー!ちゃんか!綺麗になったな!」
「あはは。また冗談ばっかり。そんなに変わってないですよー」
「いやいや、おじさんが知ってるのはこんな小さな頃だし」

家の前で家光が楽しげにの肩を抱き寄せて会話をする。
にべったりとする家光に気付くと、 ツナは「あーもう!」と頭を抱えた後でと家光の間に割って入った。

「今そんな話してる場合じゃないんだよ!いくぞ!」
「え?でも、まだ時間的に早い…」
「いいから!」

ツナはを家光から離すようにの手を引き走り出した。


「へー、これがそのハーフボンゴレリング」

朝起きたら首につけられていたというリングをは目にする。

「それで、これを狙ってそのヴァリアーっていう人たちが襲ってくるの?」
「う、うん。リボーンが言うには10日間は大丈夫だって言ってたけど…。またみっちり俺を鍛えるとか、迎え撃つとか言い出してるし、もう勘弁して欲しいよ」

ツナは迷惑そうにそう言う。

「だからディーノさんに返そうと思って」
「うーん…。そんなに上手くいくかな?」
「うっ…。こわいこと言うなよ!とにかく俺は巻き込まれたくないの!」

「ごめんごめん」とツナをからかうように、は笑う。
昨日訪れた病院を再び訪れ、ドアを開けると「十代目!」「ツナ!」と笑顔の山本と獄寺が立っていた。

「二人とも!昨日はごめん!助けて貰ったのに…」
「あ…いや」

三人の間に気まずい空気が流れるものの、「それより…」と山本が口を開く。

「ポストにこんなもんが入っててさ」
「もしかして昨日の奴絡みかと思いまして。跳ね馬にここの場所は聞いてたんで」
「え…ああああ!」

山本と獄寺の手にも指輪が握られていた。今朝、ツナが話していたハーフボンゴレリングと同じもののようだ。

「なんで獄寺と山本にも…?!」
「選ばれたからだぞ」
「あ。リボーン君とディーノさん!」

ツナ達の会話を聞いていたリボーンとディーノはそう言うと、ボンゴレリングについての説明を始める。

「ボンゴレリングは全部で7つあるんだ。そして7人のファミリーが持って初めて意味をもつ。お前以外の6つのリングは時期ボンゴレボス沢田綱吉を守護するにふさわしい6名に届けられたぞ」
「え!俺以外にも?!」
「そうだぞ。ボンゴレの伝統だからな」

リボーン曰く、ボンゴレリングは初代ボンゴレファミリーの中核だった7人がボンゴレファミリーである証として後世に残したものであるという。

「そ、それで後継者の証?!」
「十代目!!」
「え」
「ありがたき幸せっス!!」
「(めっさ喜んでるよ!!)」

青ざめるツナに相反して、獄寺は感動だというように目を輝かせている。

「獄寺のリングは"嵐のリング"。山本のは"雨のリング"だな」
「そーいや、違うな…」
「初代ボンゴレメンバーは個性豊かなメンバーでな。その特徴がリングにも刻まれているんだ」

ツナのリングは、初代ボスがすべてに染まりつつ全てを包み込み、包容する大空のようだったことから"大空の"リング。

「そして守護者となる部下達は、大空を染め上げる天候になぞらえて作られたという」

すべてを洗い流す恵みの村雨 "雨のリング"
荒々しく吹き荒れる疾風 "嵐のリング"
なにものにもとらわれず我が道を行く浮雲 "雲のリング"
明るく大空を照らす日輪 "晴のリング"
実体のつかめぬ幻影 "霧のリング"
激しい一撃を秘めた雷撃 "雷のリング"

「つってもお前達の持ってるリングだけじゃ…」
「ちょっ!ストーップ!!とにかく俺はいらないから!」

淡々と説明を続けていたリボーンの話を遮り、指輪を返そうとするツナ。 そして山本も野球をやるので指輪は着けないということで返そうとしていた。

「それにこんなの持ってたら大変なんだって!昨日のロン毛がまた狙ってくるんだよ!しかも下手したらたったの10日だよ!」

そういうツナの言葉に山本と獄寺が興味を示した。
そんな会話がなされていたなかでは、スカートのポケットに違和感を感じる。

「(あれ…?ポケットになにか入ってる…?)」
「10日…これ、俺のだよな?やっぱ貰っとくわ」
「え!」
「負けたまんまじゃいられねぇ質みてーだな。俺は」
「や、山本!」
「俺も10日でこのリングに恥じないよう生まれ変わって来ます!」
「ちょっ!獄寺君まで!」

ツナの言葉でやる気を出した二人は勢いよく病院を出て行ってしまった。

「10日で残り4人の守護者達も鍛えねぇと、ヴァリアーには勝てねぇぞ」
「つーか誰なんだよ。あと4人って」
「どいつもお前のよく知る人物だぞ。ちなみに今から"晴のリング"を持つ奴が来るぞ」

そう言ってパオパロ老師の衣装に着替えだしたリボーンとそんなリボーンと会話をするツナ。 その一方で、はこっそりとツナから背を向けて少し離れたところでポケットに入っていたものを見た。

「(やっぱり、リングだ。いつのまに…。でもこの模様って、"三日月"…?リボーン君がさっき説明してたものに当てはまらない気がするんだけど…)」

が一人首を傾げているのを他所に、病院に笹川京子の兄である笹川了平がやってきていた。

「俺の為に幼馴染みをよんでいただいたとか…」
「幼馴染み…?」
「くされ縁だぞ」

リボーンのおしゃぶりが黄色く光る。これはアルコバレーノが近くにいる証だ。

「久しぶりだなコラ!」
「コロネロ!」
「今回は時間がねぇから、俺一人で全員鍛えられねぇんだ。だからリングを持つ奴それぞれに専属の家庭教師をつけることにしたんだ」

どうやら"晴のリング"を持つ了平の家庭教師には、コロネロがつくことになったらしい。 そんな了平を見て、なにか才能を見定めたコロネロは不敵に笑うと、「ついてこい!」といい了平を連れてさっそく特訓へ向かって行ってしまった。

「大丈夫なの?あの二人…」
「心配すんな。コロネロは何千という生徒を見てきたんだ。そのコロネロを唸らせたってことは、了平はうまくいけば何倍も強くなるぞ」

そういうとリボーンは、先ほどから背を向けているに目を向ける。

「それより、まだ話は終わってねぇぞ」
「まだなんかあんのかよ」
「お前じゃねぇ。だ」
「!!」

ギクッ!とはリボーンの言葉に肩を揺らして、ゆっくりとツナ達の方を振り返る。

「えーっと…」
?どうしたの?」
。お前が手にしてるそれは"月のリング"だ」
「!」
「は?!」

リボーンの言葉でツナは、が手になにかを握っていることに気付く。

「あ…」

さっとリングを隠そうとしていたの手を無理矢理開き、ツナは眉間に皺を寄せる。

「お前、これ…」
「ち、違うの!私もさっき気付いたの!いつの間にか、ポケットに入ってて…!」
「どういう事だよ!リボーン!!」

今までに無く怒った表情をリボーンに見せるツナに、は困惑したようにツナとリボーンの顔を交互に見た。