02話 ステーキ定食はお好き?
あれれ?私、ハンター試験を受けに来たのに…なんで、ご飯屋さん?
「うわ、美味しそうー…」
店員さんに奥の部屋に入るように言われ、入って私が目にしたのは超高級な分厚いお肉でした。
「た、食べてもいいよね?家出てきてから、ここに辿り着くまで何も食べてないもんね…」
目の前の美味しそうな超高級肉に釣られた私は…。
「いただきまーす!」
豪快に食べ始めた。
チーン
「ん?」
音が鳴った事に気がつき、前を見ると自動でドアが開いた。
「…まさか」
ここが本当の試験会場?
「んー…よし!」
ここまできたらグダグダ言ってても仕方ない。死なないように合格して、家に帰って美味しいご飯を食べるだけだ。
気合を入れ、私は異様な雰囲気を放つ方へと足を踏み入れた。
「うわっ!すっご!」
まるで、赤ちゃん連れた新米ママさんの公園デビューみたい!視線がすごい。だけど嫌な、感じだ。
「さん、必ず来られると思っていました。番号札です!」
「ありがとう!おじいちゃん、またマーメンに我侭言ってるんじゃない?」
「ええ、それはもう…」
「頑張れー」
「さんも頑張ってく下さい」
「うん。ほどほどにやるよ」
受付で番号札を渡してくれた彼はいつもおじいちゃんと一緒に仕事をしてくれてるから、私もよく知っている。
最近は、おじいちゃんの我侭を聞く役目みたいな感じになってる気もするけど…。
「えっと、番号は…」
402番、か。私が胸に番号札をつけたと同時に、私の後ろの扉が開き、誰かが入ってきた。
チーンと鳴った音と共に私が後ろを振り向くと、ツンツン頭の可愛らしい男の子。そんなに年も違わないだろうって感じの子だった。
マーメンから番号を受け取るなり、キョロキョロと辺りを見渡す男の仕草が仕草が何処となく可愛らしくて、気づいたら…。
「か、可愛いー!」
つい叫んでしまった。
「えっ」
「あ!ご、ごめんなさい!つい!」
「ううん。大丈夫だよ?女の子がいると思わなくて吃驚しちゃっただけ」
そういうと男の子は、ニッコリと私に笑い掛けてくれた。
う、わー…こ、これは是非とも、お友達になりたい!
「私、!」
「俺はゴン!」
「宜しくね」
「俺の方こそ」
そう言いながら、私がゴンと握手をしていると、ゴンの後ろに居た二人の男性がゴンの事を探していたように近づいてくる。
「ゴン?」
「あ、クラピカ!」
「くら、ぴか?」
なんて電球みたいな名前!名前通り、優しそう…。
「俺の友達だよ!、こっちに来て!」
「え?!ちょっ!ゴン?!」
ゴンに手を引っ張られて、その二人の方へと連れて行かれた。
「どこ行ってたんだよ!ゴン!番号貰ったか?」
「うん。ごめん、ごめん」
「ところで、ゴン」
「その女の子は誰だ?」
二人の対象がゴンの方から私の方へと視線が変わった。
「さっき、仲良くなったんだ!って言うんだよ!」
「初めまして。です!好きなものは猫と、後はえーっと」
チョコレートに、苺でしょ。次にケーキでー、それとそれと…っと、私は次々に好きなものを考えだした。
「…変わった子だな。悪意は無さそうだが」
「ああ、だけどここまで残った受験生だ。女性とは言え、安易に信用も出来ない」
「そうかな?俺はいい子だと思うよ!」
ゴンの言葉に二人の男性が息をつくも「分かったよ」といい私の方を見る。
…って、あ!忘れてた。自己紹介してたんだ!
「え、えーっと、とにかく!宜しくお願いします!」
「ああ、私はクラピカ」
「レオリオだ。宜しくな」
「うん!」
どうやら、三人ともとってもいい人みたいだ!
「ところで、一体何人くらい人がいるんだろう?」
「多いよねー!」
ゴンの言葉で、私も辺りを見回していると、横から男性の声が聞こえた。
「君達で405人目だよ」
その声がした方を同時に私達は見る。
「俺はトンパ。よろしく」
トンパ、と名乗るおじさんが話しかけてきた。
「新顔だね、君達」
「わかるの?」
「なにしろ俺、10歳から35回もテスト受けてるから」
「35回!?」
「なんでそんなに…」
初めは、暇な人だなって言うのが印象だった。 そして、トンパさんに試験で顔見知りの人達を紹介してもらっていたその時、男の人の叫び声と共に、私の目に入ってきたのは…奇怪なピエロでした。
「腕が消えちゃった」
とピエロは楽しそうに笑っていた。
「さ、寒気がする…」
トンパさんによると、あのピエロの名前は、奇術師ヒソカ。
恐ろしい実力を持ちながらも、去年試験管を半殺しにしたために不合格となったらしい。
「(オーラが半端ない。あれはヤバイ…)」
「命が惜しかったら、近づかない方がいい」
トンパさんに言われなくても、絶対に近づきたくないというのが正直なところだ。
「おっとそうだ」
そう言いながらトンパさんは、ジュースを私達に差し出してくれた。
「ありがとう!」
「わーい!」
ラッキー!後で飲もう!と、思って鞄の中に入れようとした瞬間、ゴンの眉間に皺が寄った。
「トンパさん、このジュース古くなってるよ!味がヘン!」
味が、ヘン…?ま、まさか…。
「賞味期限切れ?!わー、危ないよ!そんなの!」
間違えて飲まないように…と私はジュースを床に置いた。
「俺、山とかで色んな草や芽を試し食いしてるから大体味で変なものが分かるんだ」
「ゴン、凄い!」
私は、ゴン達と辺りを見渡しながら試験が始まるのを待っていた。その時…。
「っ!」
な、なに?!この凄まじい殺気?!
ぞくりとした殺気に私は思わず、殺気がするの方向を探る。そして、その方向には…。
「…まさか、ヒソカ?」
「?どうかした?」
「ううん!何でもない!私、ちょっと周り見て来るね」
「気をつけてね!」
「うん!直ぐに戻るから!」
私はそう言って、少しヒソカが見やすいような位置へと移動した。
近づきたくないけど…あの、ありえないくらいの殺気は気になるし、ゴン達に何かあったら嫌だ。 私は、ヒソカに絶対に気づかれて居ないと思って見ていたが、あの殺気はわざと気付いて欲しくてやっているようなものだ…。
「あ、あれ?何処行ったの?!」
殺気を辿って来たはずなのに、ヒソカが消えたと思ったと同時に私の背後から声が聞こえた。
「僕を、探してるのかい?」
「っ!!ななな!なんで?!」
「んー?君が僕の殺気を辿って来てるって気付いたからね」
うわー…実際にしゃべってみたけどこれは、予想以上に気持ち悪い!!
「…私達に何か用?あんなわざとらしい殺気送ったのは貴方の方よ」
「君と喋ってみたかったから」
「え」
「まだまだ僕には敵わないけど、楽しめそうだ」
ジリリリリー!!
「「!!」」
私がヒソカへと向けようとした言葉は、ベルによって掻き消された。
「おっと時間だ。それじゃ、また後でね」
「え。ってか、なんで私の名前…って、居ないし」
ヒソカの姿を見失った私は、急いでゴン達を探しに行った。