06話 もしもしゆで卵さん?
「二次審査後半の料理合格者は、ゼロよ!」
だがもちろん、そんな結果に納得できるハンター受験者達じゃなくて…。
「納得いかねぇな!」
「ふざけんじゃねー!!」
だけど、数人の受験生がハンターの試験管にキレて襲い掛かったところで無意味。
パァン!!!
試験管のブハラさんの手刀で一撃だ。プロのハンターに敵うはずがない。
「武芸なんてハンターやってたら嫌でも身につくのよ!」
メンチさんは包丁を上手に使いこなしながら言った。
「私が知りたいのは、未知のものに挑戦する気概なの!!」
「しかし合格者0とは、ちとキビシすぎやせんか?」
「(こ、この声は…!)」
ハンター協会マークの付いた大きな飛行船、そして、この声。私が聞き間違えるはずがない。
「おじいちゃん…」
どれくらいの高さからだろうか? 飛行船から、ドォン!と大きな音をたて、ネテロさんは飛び降りてきた。
「メンチくん」
「はい!」
あのメンチさんが緊張して、敬礼をする姿に受験生一同が驚く。
「凄いね。あの人」
「一応ハンター試験の最高責任者だからね」
だけど実際、私もはじめて見るなぁ。おじいちゃんが仕事してるところ。
「なんにせよ。私達はもう一度、試験が受けられるようだな」
「「!!」」
クラピカの言葉に私とゴンは顔を見合わせて笑みを浮かべた。
私達は、メンチさんも実演という形で新しい試験を迎えられることになった。
「それじゃあ、ゆで卵」
ゆで、卵…?そしてメンチさんが指を指した大きな山のふもとへと連れて行かれることになった。
試験内容は、マフタツ山のクモワシの卵を穫り、それでゆで卵と作ると言うものだ。
どうやら崖の下は流れの速い川になっているらしい。
「す、すごーい!」
普通の人の神経じゃ飛び降りて卵を穫ってこいなんて言われて簡単に行けるわけがない。
だけど、私も感覚が麻痺してきているらしい。
「(これくらいの崖なら、おじいちゃんの出すテストより簡単かな)」
「あー良かった」
「こーゆーのを待ってたんだよね」
「よっぽど分かりやすいぜ!」
キルアやゴン達の会話に私の中の感情はドクドクと高まる。
「じゃあ、行く?」
「「もちろん!」」
私の言葉が合図になったように、皆がそう言って飛び降りた。
「これがクモワシ、ねぇ…」
確かに、これは蜘蛛と鷲の性質を両方併せ持っている。まさしくクモワシだわ。
私は、吊るされた卵を取ろうとして手を伸ばし、卵を上手く掴んだまでは良かったのだけど…。
「え…あっ!あわあわ!」
ドジをして卵を取り損ね、落としかけた卵をキャッチするなり、糸からバランスを崩して体重が支えられなくなった。
「ぎゃー!落ちるー!!」
「「!!」」
パシッ!!
「た、助かったぁ…」
ゴンとキルアの二人が私の声に反応して手を掴んでくれたおかげで、どうやら落ちずに済み、卵も手にする事ができたようだ。
「大丈夫?!!」
「なにやってんだよ!ドジ!」
「ご、ごめーん!二人ともありがとう」
その後、ゴンとキルアに手を引っ張って貰い、私も無事に崖から這い上がることができた。 実際に皆でお湯を沸かして、その市販の卵とクモワシの卵を食べ比べてみると、あからさまに味が違う。
「おいしい!!」
「本当だね!」
「料理できねぇ癖によく食うのなー。」
ゴンと仲良く話していたのに、水を差すようなキルアの言葉に、私は喉を詰まらせる。
「うっ!食べるのは大好きだもん!悪い?」
「べーつにー」
「なんか、むかつくー!」
「まぁまぁ、二人とも!」
第二次後半 合格者42名
ゴォンゴォンと揺れる飛行船の中で、私達は一息をつく。
そしてその飛行船の中でも、ハンター試験の最高責任者であるネテロさんは相変わらずマイペースだ。 どうやら、このまま同行するらしい。
「(全く好きだなー、おじいちゃん。こういうの…。スケジュール埋まってるはずなのに)」
見るからにマーメンを困らせているネテロさんの様子に思わず苦笑いしそうになる。
「ゴン!!飛行船の中、探検しようぜ!」
「うん!!」
「あ、私はパス」
「「何で?!」」
どうやら、私は思いっきりゴンとキルアの不満を買ってしまったようだ。
「だ、だって、シャワー浴びたいんだもん…」
確か、飛行船にはシャワーがあるっておじいちゃんから事前に聞いたんだよね。
「そんなもん後にしろよ!」
「一緒に行こうよ!」
くっ…!ゴンにそんな風に言われたら断る事なんて出来るはずもない…! だけど私は今、シャワーが浴びたい!結論…。
「後で絶対に行く!」
私はその場から走り去った。
「絶対だよ!!」
「うん!!」
「5分以内だからな!」
「うー、ん?いや!流石にそれは無理!」
どれだけ入るのが早い女子高生がいてもそれは、それは無理だよ!
「元気な奴ら」
「私は寝る」
レオリオとクラピカは、そっと腰をしずめた。