08話 恋は突然訪れる
暫く経って私は、目がはっきりと覚めた時にはどこかの部屋で、目の前にキルアがいた。
「きるあ?」
「起きたのか」
「うん…?」
あれ?なんだかキルアがいつもと違う感じがする。それに、この鼻にくるニオイは…。
「血の匂い?」
「っ…洗い流したつもりだけどやっぱバレたか」
「えっ!ちょっと!キルア、怪我でもしたの?!」
私は勢いよくキルアの手首を持ち上げ、怪我をしていないか確認をする。
「!!…オレじゃねぇよ」
「嘘!だってさっき洗い流したって…」
「、すぐに俺から手を放した方がいい」
「え?な、なんで?」
「…俺の手は、人殺しの手だからさ」
「なっ…!」
「分かったら、さっさと…」
「バ、バカもん!!」
「っ!誰がだよ!」
思わず私がいつもおじいちゃんに言われている口癖が出てしまった。
私はキルアが何かを言い終わる前に、此処までか!というくらい思いっきり叫んだ。
「キルアのことに決まってんでしょ!ふざけんな!」
「はぁっ?!俺はお前を心配して言ってやってんだぞ!」
「だったら大きなお世話よ!悪いけどキルアが何を言おうとも、私は自分で感じたものしか信じないの!」
「じゃあお前はどう思ったっていうんだよ。言ったろ。俺の家は暗殺一家だって」
「でもそれが嫌で出てきたんでしょ?」
「……」
「それにキルア、この手で私に魚くれたじゃん。私の事、掴んでくれたじゃん。いっぱい助けてくれたじゃんか!」
だから絶対に駄目だよ。そんな風に言っちゃ。
私は、キルアが信じられる人だって思った。そして殺人なんて望んで出来る人じゃ無い。
「お前…」
私は、掴んでいたキルアの手をさらに強く力をこめて握る。 キルアが自分で何を思っていても、私は違うと何回でも言う。
「キルアの手は、絶対に人殺しの手なんかじゃないよ」
「…」
握られた手が温かい…。今まで、こんな風に自分の手を握った人なんか居なかったから、手を握られるのがこんなにも温かいのだとキルア自身初めて知った。
言い返してやりたいのに、がそれを許さないと言ったように真っ直ぐにキルアを見る。
「だから言っちゃ駄目!」
「…分かったよ。言わねぇよ」
「ん、それでよし!」
納得したように優しく笑いかけたにキルアは息をつく。
「(本当…何なんだよ。この女…自分勝手すぎるだろ…)」
だけど裏切れない。いや、むしろ裏切りたくないとさえ、思っていた。
「それよりゴンは?」
「…まだやってる」
「えー!頑張るなぁ…。あれは、おじいちゃんが絶対に捕れない自信を持ってるから吹っ掛けてきてるゲームなんだよ」
「あのじぃさん。化け物だよ」
「だよねー。私も思う」
知らなかった。こんな自分に対して、普通に話して、笑いかけてくれる奴がいるのが心地良いなんて、初めてだった。
「。もう少し寝てても…!」
コテッとの体重が、キルアの肩にもたれ掛かってきた。
に目をやると、先ほどよりも安心した顔で眠っている。
「……意味わかんねぇ」
人のこと怒鳴りつけて、勝手に人の手握って、満足したら寝るのかよ。とキルアは小さくで呟く。
「俺なんかを信じるなんて…馬鹿だよ。お前は」
キルアは、そっとの髪に手を伸ばす。
その瞬間、ドクンとキルアの心臓が脈を打った。
「え…?」
ドクン、ドクン!と高鳴りだした自身の胸の鼓動を感じて、キルアは寝ているから慌てて手を放した。
「…やっべぇ」
心臓の鼓動がいつもより確実に速い。
を見るだけで、今まで感じたことがない熱い感情も流れてくる。 体が、あつい。その瞬間、この感情が何を意味するのかが分からない程、馬鹿じゃない。
「(あーあ、厄介なの好きになっちまったなぁ…。俺も)」
夜は、まだ長い。
飛行船は順調に次の試験会場へと進んでいるのだった。
「ん。んんー…」
キルアの思いなど知らずに、ぐっすりと眠るだった。
「アンパンは、こしあん…くー」