10話 目指せ!10連勝!
「よし!こい!」
『正解は?』
ピコポーン!
「はい!ミテネ連邦!」
ピンポーン
「よしキター!!」
只今5連勝中。と言っても…戦闘時間は既に15時間を超えている。
アナウンスが流れる。
「おめでとう。次の対戦は、三立方程式からの計算問題だ」
「……だからさー」
なんで対戦方法が全部学問なの?!
私の知識は、全部おじいちゃんが雇ったハンターから教えられたものだった。
そのおじいちゃんはハンター試験の最高責任者…アイザック=ネテロ。
故に、私の苦手範囲は全て試験管にバレているのだろう。 そういえば過去にもおじいちゃんの出すテストに知識を問われるものはなかった…。 とすれば、むしろこれを受けさせるのが目的だったんじゃ?とさえ思えてくる。
「あのクソじじぃ…いつか泣かす…」
『さぁ、準備はいいか?』
「分かったわよ!やるわよ!やればいいんでしょ!」
絶対に勝ってやる!!
そのころゴンたちは…
「すまねぇ!!バクチには自信あったんだが」
「あのザマでか?」
レオリオは、対戦相手の女性に賭け勝負で完敗。どちらも、苦戦を強いられていた。
「X=13!」
ピンポーン
「やった!」
だんだんと調子が出てきた。流石に何度も繰り返すと出題パターンも似てくるってもんよ!
「さぁ、次はなに?古代文字?それとも世界遺産?」
『フフフ…。いいだろう。ここからが本番だ』
「…本番?」
『次から、本当の戦いが始まる』
リッポーさんはそう言った後、アナウンスは聞こえなくなった。
「えっ?!ちょっと!リッポーさん?!」
私にどうしろっていうんだ…。
突如訪れる沈黙に訳が分からず、右往左往にその場を歩き回っているとドアが再び開かれた。
「?」
私の前にフードを深く被った小さな男の子が立っていた。
「さぁ、デスマッチを始めよう」
「…はぁ?」
一見ゴンくらいの背丈で、悪い子には見えない金髪の男の子。
「デスマッチって…何かの間違いじゃないかな?」
「間違いじゃないよ」
シュッ!
「!!」
ダン!
「良い反射神経だね」
突然投げれたナイフ。なんとか避けたが、ナイフは私の横を通り過ぎて壁に突き刺さる。
どうやら、この子は本気らしい。でもこの子は一体何者なのだろう?
「どうやら何も分かってないみたいだから、教えてあげるね」
「?」
「僕は、超長期刑囚の一人だよ」
「ちょうちょうきけいしゅう?」
早口言葉みたい…。ってことはこの子は犯罪者?!
「他の受験者も同じだ」
「え…っていうことは、ゴン達も…」
「皆、減刑を条件に君たちの試験管を受けている」
「なるほど」
確かにハンターの適正を判断するに分かりやすいと言えるかも知れないが、 犯罪者を試験管にするだなんて、ろくでもない考えをする試験管もいたものだ。
「君には僕も含めて後4人と連続で一対一で戦闘してもらう。4人全員が君に負けを認めれば、それでこのステージはクリアになる」
「分かった。どうせ私に拒否権はないんでしょ」
「合格したかったらね。言っておくけど、君が戦う4人は全員連続殺人犯だよ」
「っていうことは、君も?」
「その通り。2年程前、パドキア共和国で女性ばかりを狙った通り魔が有名になったのを知ってる?」
「えーっと、確か100人以上が殺害されてその上、全員右手を切断されていたとか、なんとか…」
「そう。その犯人は僕だよ」
「……まじで?」
「お姉さんの相手には僕から志願したんだ。お姉さんの右手、僕の好みだったから」
「(…なぜだろう。口説かれてるはずなのに、全然嬉しくない!!)」
「さぁ、始めようか」
ぞくりとする気持ち悪い寒気を感じつつも、私は手持ちのピコハンを強く握った。
「ねぇ、キルア。どうしてるかなー?」
「さぁな…。まぁ、がどうこうっていうより、時間的には合格者が出てても可笑しくない頃だな」
「あ。そっか。じゃあ、も下まで行ってるかもね!」
「一応あのじいさんの弟子らしいしな。俺達が戦った相手くらいなら、あいつも楽勝のはずだぜ」
ゴン達はレオリオをが賭けで負けた代償の50時間をまったりと過ごしていた。
しかしゴンと話すキルアの言葉に、レオリオが「ん?」と反応する。
「ちょっと待て。何の話だ?そりゃ」
「はネテロ会長の弟子なんだって」
「はぁ?!なんだってー!ネテロ会長っつーと、二次試験の時にきたハンター試験のお偉いさんのことだろ?」
「ハンター試験の最高責任者…。それならの強さも納得がいくところも多いが、何故、彼女は受験を?」
「無理矢理受けさせられたって言ってたよ」
「おい。本人がいないとこでこんな話したってしょうがないだろ。それより、いいもの見つけたんだ。ゴン、これやろうぜ」
「キルアなに?それ」
「ゲームだよ。ゲーム」
ゲームのコントローラーを手にするキルアに釣られて、ゴンもゲームに夢中になりはじめる。
「(なら、楽勝のはず…とはいえ、なんか抜けてるとこがあるんだよなぁ…)」
「あ!キルア!前!」
「やべっ…」
画面に表示された「GAMEOVER」の文字にキルアとゴンは同時にため息をついた。
パンパカパーン!!
がピコハンで一人として寄せ付けずに吹き飛ばした瞬間、音が鳴った。
「連続殺人犯かなんか知らないけど、私の敵じゃないわ!」
ゴンたちの心配は知る事もなく、見事には無傷で4連勝を成し遂げてみせた。
「リッポーさん、これで合格?」
『素晴らしい。それでは扉の中に入れ』
「やったー!」
やっとこの部屋から抜けられると上機嫌の私が扉の中に足を踏み入れた瞬間…。
「…ん?」
ふわりと体が宙に浮き、重力に負かされるがままに落下する。
私の足場には地面がなかった。
「き、きゃああああああ!」
油断した…!
ドシン!!
「い、たたたぁ…」
受け身に失敗して、また尻餅をついてしまった。
ゆっくりと私が顔をあげた瞬間、アナウンスが流れた。
『402番 。三次試験通過』
「…え」
あ。402番…私のことか。そうだ!ゴン達は?私は一目散に周りを見渡した。
「いない…」
まだ塔の中にいるのかな?
「わぁーん!皆、早く来てよー!」
「やぁ。君もトランプする?」
「!ヒ、ヒソカ…」
背後から聞こえたヒソカの声にビクッと私の肩が反応した。
しかし、殺気は感じない…。
「暇なんだろう?大丈夫。ゴン達はきっと来るよ」
できればお断りしたいところだが、待つしか無い今、暇なのは事実か。
「…う、ん。じゃあ、やる」
「そうこなくっちゃ」
「よーし!やるからには、私が勝つわよ!…って、あれ?」
私はトランプをしようとヒソカの方へ行くと、その隣には、301番という受験番号を胸につけた男性が座っていた。 顔には大量の針…。彼からもなんだか思いっきり怪しい雰囲気が出ている。
「えーっと、初めまして。お、お名前は…?」
「カタカタカタ」
「あ!私は、」
「カタカタ」
「これでも結構ポーカーは強いんで自信がありますよ」
「カタカタカタカタ」
「…あのぉ」
見るからに怪しいけど、殺気は感じないから大丈夫なんだろうけど…せめて喋って欲しいなー!
うーんと私が困っているとそんな様子を見ていたヒソカがクスクスと笑う。
「別に今は少しくらい喋ってあげても良いんじゃないの?」
「…ギタラクル」
「え?」
「俺の名前だ」
「ギタラクルさんですか?!宜しくお願いします!」
「…君、なんでそんなに嬉しそうなの?」
「え?だって、名前教えてくれましたから」
「変なの」
「なっ!」
「(なるほど。この子か…)」
だけどそれきり、ギタラクルさんは再び喋らなくなった。
それでも始めはトランプを続けていたが、なかなか来ないゴン達の事が心配で仕方がなくて私は次第にドアの方を見ているしか出来なかった。
アナウンスが流れた。「残り1分」と告げられる。
「ゴン…?」
祈るように私がドアを見つめていると、残り1分を切ったところでドアが開いた。
「!!」
「ゴンー!!」
三次試験終了というアナウンスが流れると共に、私は皆の方へと駆け寄った。
「よかったぁ」
「も平気か?」
「クラピカ!ああ。私は、全然平気だよ」
「そうか」
クラピカと私が話をしていると「」と聞こえてきた声に私は振り返る。
「キルア!」
「元気そうじゃん」
「勿論!この私に掛かれば楽勝よ!」
「まぁ、そうだろうな」
「っていうか皆、私よりボロボロだけど大丈夫なの?」
「あー。平気、平気」
「ちょっと手が痛いだけだしね」
「そうそう」
後から聞いたところによるとなんでもゴン達は多数決の道に迷い込んでいたらしい。 最後は五人で行ける長い道と三人でしか行けない短い道の二択を迫られた壁をぶち破り、五人揃って短く簡単な道へと入ったんだとか…。
「ゴンってたまにすごい発想するよね」
「えへへ。そういえばはどんなことやったの?」
「あー…まぁ、色々?」
「なんだそれ。ちゃんと説明しろよ」
「あとで話すよ」
正直、もうあんな試験一生やりたくない。と思いつつ三次試験を通過した私達は次の試験会場に向かうために飛行船へと乗り込んだ。