11話 獲物をロックオン!
次の試験は、狩る者と狩られる者…。
「362?」
皆さん、こんにちは。
四次試験が開始されると発表された直後、リッポーさんに言われた通りに私達はクジを引いた。
「さ、む、に…」
なんか寒い番号だな。私ならこの番号で受験したくないなぁ。だって、いかにも落ちそうな番号じゃん。
「奪うのは、受験生のナンバープレート」
こうして第四次試験が幕をあけたのだ。
自分のナンバープレートも3点。クジで決めた自分のターゲットのナンバープレートも3点。 でも、それ以外のナンバープレートは1点だとリッポーさんは説明の時に言っていた。
「そして、合格に必要な点数は6点か」
私はクジを引いた番号を手にじっと見つめる。 ルールは単純だし、ターゲットのナンバープレートを奪えばいいだけだと言うことは分かった。 しかし、そもそもの問題がある。
「この寒い番号は、誰のだろう?」
う~ん…分かんない…まぁ、次の試験会場の島に着くまで二時間はあるらしいし、 迷っていても仕方ないから、船の中をちょっと歩いてみるか。なにかヒントが見つかるかもしれないし。 と私が立ちあがった瞬間に、後方から声がかけられた。
「、少しいいか?」
「あ!クラピカー!」
「元気そうだな。いい番号でも引いたか?」
「誰か分かんないから、何とも言えないかな」
「そうか」
「クラピカ、どうかしたの?」
「あ、いや。ただ、ずっと気になってた事があってな」
「私のことで?」
「どうして、がハンター試験を受けたのかだ」
「…私、は」
あのクソじじぃのせいです!とは言えずに、言葉を選びつつも私はクラピカの質問に答える。
「えーっと、私の師匠から受けろって言われて…」
「ネテロ会長か?」
「…あれ?私、話たっけ?」
「すまない。ゴンとキルアから聞いたんだ」
「あ、なるほど。別に大丈夫だよ」
「がここにいることをずっと気になっていた」
「え?」
「最初からから悪意は一切感じなかった。だけど普通ではないこともすぐに分かった」
まぁ、こんなところに居る時点で普通じゃないのは確かだよね。
「今まで相当な鍛錬をしてここまできたはずだ」
「あはは、女の子としては複雑だなぁ」
「そんなことはない。は素敵な女性だ」
クラピカは軽く微笑んだ。
「あ、う…」
やっぱりクラピカ美人だよねー。女だけど、うらやましい。
「それに、強さを含めての魅力だ」
「お、お世辞はいいよー!恥ずかしいから!」
「お世辞を言ったつもりはないのだが…」
今まで散々、周りが私に対して扱いが悪いから急にそんなこと言われると照れてしまう。
「そ、それよりクラピカは?どうして試験受けたの?」
「私か?」
「う、うん!」
照れ臭さが抜けない私は、話を無理矢理逸らそうとクラピカに話を振る。
「私はクルタ族の生き残りだ」
「くるたぞく?」
どこかで聞いた事があるような…。
「感情が高ぶると目が緋色になる種族だ」
「緋色の目…」
そうだ。ネテロさんから渡された文献だ。 確かその緋色は、世界七大美色に数えられるほど美しいって書いていたけど…。
「しかし同胞は皆、幻影旅団に殺された」
「!幻影、旅団…」
史上最強として悪名高い盗賊のことだ。
「知っているのか?」
「うん。ネテロさんが…」
「なにか聞いたことはあるか?!」
「ごめん。詳しくは分からない…だけど…微かに…」
ネテロさんが部屋でこっそり誰かに電話をしているのを何度か聞いたことがある。
『また、幻影旅団が現れたらしいの。今回の後始末も大変じゃろうが頼んだぞ』
幻影旅団の彼らが関わると大抵、仕事は大変になる。いつもネテロさんはため息をついていた。
誰かが殺された。なにかが盗まれた。そんなネテロさんの会話を私は何度も耳にしている。
だからこそ正直、私は彼らにいい印象を持ってはいなかった。
「クラピカ…!クラピカはまさかその幻影旅団を…」
「…やられた仲間の目だけが、全て彼らに持ち去られていた。私がハンターを目指した理由は、同胞達全員の緋の目の回収と仲間の仇である幻影旅団を捕まえることだ」
やっぱり、そうなってしまうのか…。
「私…クラピカに頑張ってとは言えない。敵討ちは誰も幸せにはなれない」
「自分でもよく分かっている。こんな話をしてすまなかった。 がネテロ会長に近しいと聞いて、ハンター協会の会長なら…彼と近しいなら幻影旅団について何か知っているのではないかと思ったんだ」
「ごめんね。直接ネテロさんから聞いたことはあんまりなくて、力になってあげられないや…」
「いや、大丈夫だ」
「でも、もし何か聞けたら教えるね。それに、今は頑張って一緒にハンターになろう!」
「…」
「まずは、次の四次試験を合格しなきゃね!」
ハンターにならなきゃ、何も始まらないもんね。
「ああ。そうだな」
「うん!頑張ってとは言えないけど、私はクラピカの味方だから」
「…。ありがとう」
「わ、私は何もしてないよ!」
「いや、言いたかっただけだ」
「それじゃあ私はゴン達探してくるねー!」
「ぁあ」
そう言って走っていく彼女の姿が、クラピカには可愛らしく思えた。
「(ゴンも人を惹きつける力があるが、はまた違った魅力があるな)」
心がやけに安らぐのは自身が嘘偽りなくさらけ出し、相手には本音でぶつかってこようとしてくれる。 相手には寄り添ってくれようとしてくれる。それが彼女の魅力だろうとクラピカは優しく微笑んだ。
「よぉ。」
「なんだ、レオリオか」
「俺じゃ不満だってのかよ!」
「だって私、ゴンとキルアを捜してたんだもん」
「悪かったな!俺で!」
「それじゃ…あ…」
「ん?どした?」
私は、その場立ち去ろうとした時、ふとさっきのクラピカとの会話が頭に浮かんだ。 さっきは、ああ言っちゃったけど…。
「よかったのかな?!レオリオ!」
「はぁ?!」
「応援できないなんて、あんな偉そうな事…!」
普通、人が目指している事を、ああも簡単に否定するなんて…私、最低なんじゃない?!
「や、やっぱり謝って…!」
あー!でも、なー!!私、クラピカには仇なんてやめて欲しいし、危ないことして欲しくない!
「どう思う?!レオリオ!!」
「いや、だから、ちゃんと説明せぇっちゅうに!」
「あ、ゴメン…」
私は、レオリオにさっきのクラピカと会話したことを話した。
レオリオと話すと、なぜか心が落ち着くのを私は知っていたからかもしれない。
レオリオは頷きながら私の話を聞いてくれた。
「なるほどな」
「最低だよね!私!」
「ん?さぁな」
「さぁなーって!なにそれ!答えになってない!」
「そりゃあ、俺もと同じ考えだぜ。仲間としちゃ、そんなもんやって欲しいわけがねぇ。でもな…どれが正しい答えかなんて、誰にも分かんねぇだろ?」
「…レオリオ」
「ま、どっちにしろにはそんな顔、似合わねぇよ。クラピカだってそう思ってるだろうぜ」
そういってレオリオは私の頭を撫でる。
「レオリオもそんな台詞似合わないよ」
「うるせー!」
「あはは。でも、そっか…。じゃあ、私、いつも通りの元気でいる!」
「おう」
「うん!じゃあ、私いくね!」
「ぁあ。ゴンとキルア捜してんだろ。早く行きやがれ!」
「レオリオ、ありがとう!」
そうだよね。未来なんて、分かんないんだもん。 それに私はクラピカとは仲間なんだから…。心配してもいいんだ。
「ったく、世話の焼ける…」
レオリオは再び眠りについた。
「!」
「ゴンとキルアいたー!」
「どこ行ってたんだよ」
「ちょっとね」
私はゴンとキルアの隣に腰を下ろした。
「は、どうだった?」
「え?何が?」
「番号だよ」
「ぁあー。それがさー」
「なに?」
「誰かわかんなくて困ってるの。さっきもここに来るまで船内見て回ったんだけど、結局分かんなくて…」
私は、持っていた362と書かれた番号札を二人に見せた。
「なんだ。お前も俺と一緒か」
「キルア、何番だったの?」
「199」
「…あー。ゴメン。分かんない」
「だろ?」
皆、自分のプレートは隠してしまっていて誰が誰の番号か分からない。 そういう私も一応、鞄の中に自分のプレートは入れてしまったけども…。
「ゴンは?」
「それがな、こいつ。すげークジ運ねぇの」
「え?」
あのキルアがクジ運がないというのだから、強力な相手なのだろうか。何番だったのか気になる。
「…これ」
ゴンがそう言って見せてくれた番号は…44。
「ひっ!!」
ヒソカの番号?!
「私、ゴンが死んじゃヤダよ!」
「それ、シャレになんないよ。」
「あ。ゴメン…。作戦は、あるの?」
「まだ分かんない。けど…やりがいはあるよ」
前を真っ直ぐに見据えるゴンの瞳には、一瞬の曇りもなかった。
「っ…!私、信じてるからね!ゴンなら出来るって!」
「ありがとう。」
そう微笑むゴンは、凄く格好良く見えた。
「…四次試験が始まるともうこの笑顔が」
「え?」
「時間も長そうだし…ここは」
「お前、また変な事考えてんじゃねぇだろうな」
「ゴンー!!」
「ちょっ、!痛い!痛いから!」
私は、ゴンに思いっきり抱きついた。
「頑張ってね!ゴン!でも、無理しちゃやだよ!!」
「え?うん…って違うって!」
「私はいつでもゴンの味方!」
「あ、うん。それも嬉しいんだけど…」
「お前いい加減離れろよ!」
キルアに無理矢理ゴンを引き離された私はキルアを睨む。
「ゴンはキルアだけのものじゃないでしょ!私は今の内に癒やしが欲しいの!」
「あのな!てめぇの頭の中は、いつもどうなってんだよ!思考がいつもズレてんだよ!」
「失礼ねー!私はキルアより常識人よ!」
「常識人は、殺し屋相手に喧嘩売ったりしねぇんだよ」
「キルアは、"元"殺し屋でしょ!それにキルアなんかこわくないもん」
「おー、言ったな」
「二人とも喧嘩するのやめようよー!」
この間にも、船は着々と目的地へと進んでいた。