12話 運も実力って信じよう


四次試験での島の滞在期間は1週間か…。

「13番スタート」

アナウンスのお姉さんにそう言われた私は、ゴン達より一足先に森の中へと足を踏み入れることになる。

「それじゃあ、行って来ます!」
「怪我すんじゃねぇぞ」
「気をつけるね」
!」
「なに?」

森の中へ足を踏み入れる直前、キルアに呼ばれて振り返ると何かを放り投げられる。

「気休めだけどやるよ」
「!キルア、これ…っ」

私の言葉を遮るように、シッと指を立てて言うキルアに「ありがとう」とだけ告げて、 少し駆け足で、なるべく今は奥へ行っておこうと思い森を駆け抜けた。

「キルア、になにあげたの?」
「知りたいか?」
「うん」

ゴンに耳打ちながらキルアは小さな声で答えた。


「キルアったら、小型爆弾なんて気休めどころじゃないでしょうが」

しかもこの爆弾、よく出来てる。小型だけどこの辺り一帯の大木を吹き飛ばすくらいなら訳ないだろう。 全くこんな高性能な爆弾、一体どこで手に入れたんだ…。
あ、でも殺し屋なんだから、小型爆弾くらい持ってても可笑しくないのかな。 なんて思考をぐるぐると巡らせながらも、私はポケットにキルアから貰った小型爆弾を鞄にしまう。

「でも困ったなぁ…」

狙うにしても、この番号の持ち主は分からないんじゃ動きようが無い。
仕方ない…とりあえず、人を探そう。 私はとりあえず、ぶらぶらとと森の中を歩くことにした。

「!」

歩きだして数分が経っていたその時、私は背後から人の気配を感じた。

「(…油断した。誰かにつけられてる)」

私がターゲットって事か?巻くのは簡単だ。だけどそうなると今逃げても、この先また付けられ続けそうだ。
面倒だし、ちょっと可哀想だが、これは試験だ。シビアに行こう。

「あのー、出てきてくれません?」

今、ケリをつける。
サァアアーと、木が揺れる音。それ以外は無音。相手が出てきそうな気配もない。

「私がターゲットなんでしょう?出て来て下さいよ。なんならこの辺り一帯、吹き飛ばしましょうか?最初から見てたんだとしたら、知ってるんですよね。私が爆弾持ってること」

その一言でやっと、木の陰から男の人が出てきた。

「こんにちは!」
「お前のプレートを貰う」
「いやよ」
「大人しく渡せば何もしない」

たった一言だった。

「…貴方は、私に何か出来ると思ってるのかな?」

が目を閉じ、再び目を開けた瞬間、男には感じた。 この一言の重みを…。

「(なんだこの女…。さっきまでの雰囲気とは全然違う…それにこれは…)」

そう。それは、殺気。
先ほどまでのからは一切感じられることはなかった。
だが、今から感じられるのは静かで、冷たい殺気がこの男には、ヒシヒシと伝わってくるのだ。

「番号は?」
「!」

は瞬時に男と間合いを詰め、耳元で囁いた。 それと同時に、男は自身の腹部から冷たい感覚がしたことに気がつく。
が構えたピコピコハンマーが確実に男の腹部を狙っていたのだ。
男が自身との実力差に気がつくのには時間は掛からなかった。

「…89番」
「他には?」
「持ってない」
「そう…じゃあ、早く消えなさい。相手の強さが分からないほど、あなたは馬鹿じゃないでしょ?」

静かにから距離を取られた後も、 男は直ぐに動くことすら、ままならなかった。


それから男と別れ、休む暇無く数日間歩き回っていた は「はぁ…」と疲れたように息を吐いた。

「いないなぁ、私のターゲット」

というより、人っ子一人あれから見かけない。 あ。私を狙っていた男の人に、362番が誰なのか聞いてみれば良かった。と少し後悔する。
あれから歩き続けたが、人は居ないし…。

「もう少し捜してみるしかないかなぁ」

でも少し休憩。と思いながら私が木の陰に腰掛たその時だった。

「うん?」

ふと上を見上げると…上から何かが降ってきた。

「え…?!」

バシーン!

「痛っつ~!!」

私の額に空から落ちてきたなにかが直撃をした。

「何なの?!もう!」

私は落ちてきた物を手に取る。

「…197?」

……ん?これって、まさかプレート?! えっ!なにこれ?!いいの?!貰っていいの?!

「でも1点かぁ」

さっきの89番のプレート貰っとけば良かったかなぁ…。

「まぁ、いいや!」

なんとかなるでしょ!
ちょっと陽に暗さも出てきた。それでも私は歩くしかない。
再び歩き出した私の前に、前方に何か光るものなにかが…。

「あれは…ハゲ頭ー!」
「だれが、ハゲだ!!」
「えっと、名前は…?」
「ハンゾーだ!ハンゾー!」
「私、!」

そんなに呆れたように、ハンゾーは話を進めようとする。

「それで?」
「え?」
「なんの用だ」
「…別に?」

ただ、なんか光ったから見に来ただけだし。

「はぁあ?!」
「あ!じゃあ貴方プレート何番ですか?!」
「294番だ。お前のターゲットじゃねぇはずだぜ」
「…うん。ハズレだ」

ううー。やっと人を見つけたのに、ハズレ…。

「…何番だ?」
「うん?」
「捜してんだろ?俺が知ってるかもしれねぇからな」
「あ!ありがとう!えーっと、362番!」
「…362番?」
「そうですけど」
「持ってるぜ」
「え?」

な、なんて言った…?このハゲ頭。362番のプレートを持ってる?

「ください!」
「タダじゃあげられねぇな」
「っていっても私が持ってるのは自分のプレートと197番のプレートしか…」
「…なんだって?」
「だから、自分と197番のプレートしか持ってないんだってば」
「197番は俺のターゲットだ!お前、どこでそれを…」
「このプレート、上から降ってきたんだよ」
「……間違いなさそうだな」
「あの、ハンゾーさん?」
「…なんだ」
「交換しません?」
「…乗った」

パシっ!と私とハンゾーさんは互いに握手を交した。

「やっ、やったー!!」
「(ラッキー!これで、後1人狩る手間が省けたぜ)」

私、なんて強運なの?!こんなにラッキーでいいのかしら!

「きっと神様の思し召しね!」
「じゃ、俺は行くからな」
「あ、お互い頑張りましょうね-!」
「ああ。お前も気をつけろよ」

こうして私は、ハンゾーさんと別れた。

「さてと…」

どうしよう…暇になってしまった。