17話 ククルーマウンテン


皆が、キルアの不合格について議論を行っていたが、やっぱりそこは委員会が一度判断を下した結果だ。
不合格を覆すことは出来なかった。

そして、その後もハンター免許証がどんだけ凄いのかとか色々マーメンが話してくれていたけど、全く頭に入って来なかった。

「……」
「真剣に聞かんか!」

バコッ!

「いったぁあい!」

私は、おじいちゃんに頭を叩かれた。

「お主もじゃぞ」
「は、はい!」

おじいちゃんにそう言われたゴンは、パッとテキストで顔を隠した。 なにもあんな思いっきり叩かなくてもいいじゃんかー!おじいちゃんのアホー!

「おほん。とにかく!ここにいる皆様を新しくハンターとして認定致します!」

こうして長い講義は終わりを向かえた。


「ギタラクル。キルアの行った場所を教えて」
「やめといた方がいいと思うよ」
「キルアは俺の友達だ!絶対に取り戻す!」
「後ろの二人も?」
「当然よ!」

ゴンの後ろに立っていたクラピカとレオリオに目を移した後、 ギタラクルは、ゴンの隣にいた私の方を見た。

…だっけ?」
「え?」
「君も来るの?」

そんなの聞かれなくても決まってる。
ゴンと顔を見合わせたあと、互いに頷きギタラクルを見る。

「もちろん!私も行く!」
「…いいだろう。キルは自宅に戻っているはずだ」

自宅?

「ククルーマウンテン。この頂上に俺達一族の棲家がある」

あれ?今、確かマウンテンって言った?マウンテンって…山、ってこと?

「なにはともあれ、諸君らはもうハンターじゃ。次に会うまで息災を祈るとしよう」

私達の会話を聞いていたのか、部屋を出ようとする私達に向けたネテロ会長としての言葉だった。
皆が部屋から出て行っているなか、おじいちゃんが私に声を掛ける。


「なに?」
「行くのか?」
「うん。行かないなんてあり得ない。キルアは私の大切な友達なの」
「ただし、いくらお前さんでも危険が伴う可能性がある。それにお前が踏み入れていい場所ではないことも重々分かっておるじゃろ」
「…分かってる。だけど私は…行かないときっと自分を責めることになる」
「それに、わしからお前にまだ言っておらんこともある」
「キルアを連れ戻したら、絶対に帰ってくるから!お願い!行かせて!」
「…まぁ、いい出したら聞かん子じゃしのう。いいじゃろう。これからのことは、その後に伝えるとしよう」
「ありがとう!おじいちゃん!」

でも、これからって…なんの事だろう?
だけど私の思考はそんなことなんて考える余裕なんてなくて、急いでゴン達を追いかけるように部屋を出た。

さんを行かせていいんですか?会長」

ネテロに近づいて心配そうな表情を見せるマーメンにネテロが息を吐く。

「あの子自らが望んで選んだ初めての道じゃ。行かせてやれ」
「ですが、彼女は…!」
「マーメン!」
「!す、すいません…。取り乱しました。…ですが、あんな場所に自ら行くなんて、彼女の秘密を知られかねませんよ。危険すぎます」
「分かっておる。じゃが、わしの知っている限り、知られたところでそれを利用して得を得ようとする奴らではなかろうて」
「それは…確かにそうかもしれませんが…」
「どちらにしろ、"アレ"はまだわしが持って居るのじゃ。それに真実を知る時はとっくに来て居る…」

廊下を走り抜けるの背中をネテロはただ見守るのだった。


!準備できた?」
「ゴン!ゴメンね!待たせちゃって!」
「大丈夫だよ」
「ったく、おせーぞ」
「レオリオに言ってないもん!」
「なにをぉお!」
「レオリオ。女性には色々準備があるんだ」
「そうだそうだ!」

私がクラピカの後ろに隠れながら、レオリオに反論の声を上げるもレオリオはそんな私にずいっと顔を近付ける。

「…女性?まだ餓鬼だろ」
「ひどい!クラピカー!ゴン-!レオリオが虐める!」
「だめだよ!レオリオ!」
「レオリオ…。前から思っていたがお前は少し人に対して無神経すぎる」
「お前ら、に甘すぎねぇか?!」

そんな言い合いをしながらも、私達が足を進めていると、背後から感じる視線に私は足を止める。

「どうしたの?
「あ。ちょっと忘れ物」
「おいおい。今度は忘れ物かよ」
「もー!ゴメンってば!先に行ってて!すぐ追いつくから」
「早くねー!」
「うん!」

ゴン達の姿が消えたのを目にした後、私はくるりと背後を振り返る。

「えーっと、ギタークレさんでしたっけ?」
「…ギタラクルだよ」
「あーそうそう!」

名前ややこしくて、覚えらんない…。

「えっと…キルアの居場所、教えてくれてありがとうございました」

ぺこりと私がお辞儀をすると驚いた様に彼は目を見開いた。

「あの、それじゃあギタタカスさん?」
「君、頭悪いの?」
「うっ…そ、そんな事ないです!多分…」

私が言葉を詰まらせながらそういうと、彼は息を吐いた後で口を開く。

「…イルミ」
「へ?」
「いちいち訂正するのめんどくさいから、イルミでいいよ」
「あの…まさかそれって…」
「それが俺の本名」
「…ありがとうございます。でも、いいんですか?私なんかに本名教えても」
「別に隠してないから。偽名使ったのはキルに正体をバレたくなかっただけだし。ねぇ、それより、なんで僕に御礼なんて言いにきたの?」
「私、これでも礼儀は通す方なんです。もちろん、キルアの事はものすごく怒ってますけどね」
「あ、そう。でも、家の場所も別に隠してないよ。行けば、近くに住む奴らは誰でも知ってる」
「そうなんですか?殺し屋さんのお家なんですよね」
「まぁね。でも、君たちも行ってみれば分かるよ。君たちと俺らとの違い、が…」
「イルミさん?」
「……いや、なんでもない」

少し言葉を詰まらせたのが引っ掛かるものの、イルミさんに頭を下げて 私はイルミさんに別れを告げてゴン達の所へと走った。

「……」
「面白い子達だろ?」
「うん。ヒソカが見守りたいって気持ち分かるよ」
「そうだろ?特にゴン…」
「それより、彼女だよ」
のこと?気に入ったの?」
「うん。というより、調べる必要があるかもしれない」
「どういうことだい?」
「あれ、血統証付きかも。だとしたら、流石俺の弟だな」
「?」

ヒソカにそう言うと、イルミはピッピと携帯を弄り始めた。


ピーピー…。

「なにがなってるんだろ?」

私がゴンたちを探している時、どこかのパソコンから大きな音が鳴っているのが聞こえた。

「あ、いた!」
!キルアの家まで行くチケット予約しといたよ」
「本当?!それよりさっきなんか凄い音したけど…」

私がゴン達が操作しているパソコンを覗きこむと、大きく文字が書かれていた。

「"極秘指定人物"…?」
「ゴンの親父さんだ」
「へー…ってか、え…そんなに偉い人なの?!」

以前、おじいちゃんが言っていた。
極秘指定人物に設定するには、大統領並の権力とかなりのお金が必要だと。


「やはり難しいかのう…なら結構じゃ。無理言ってすまんかったの。その代わり、もう一方は頼むぞ」
「かしこまりました」

これは過去の記憶…。おじいちゃんが確か、マーメンを通して話をしていて、その後で幼い私に言ったんだ。

、今日からお主はわしの孫じゃ」
「え…。っていうことは、おじい、ちゃん?」

どうして。こんな幼い過去のことを思い出すのだろう…。
"=ネテロ"と名乗ることになったあの日から、私の人生は変わったんだ。

「一筋縄じゃ、いかねーみたいだな」
「うん」

ピーピーと鳴る音共に表示された文字に私達は息を飲んだ。